Novel

□June Bride
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「ジューンブライドかぁ…」

それはオーストリアの家で、二人がティータイムを楽しんでいた時だった。
不意に聞こえた、近くの教会の鐘の音。見遣ると、どうやら結婚式が行われているようだ。
家族や友人達から祝福を受けている、幸せそうな男女を眺めながら、ハンガリーがうっとりしたように呟いたのが先の台詞である。

「ジューン…ブライド?」
「オーストリアさん知らないんですか?6月に結婚した花嫁は幸せになれるんですよ」
「そういえば、6月はジュノーの月ですね…」

女性と結婚の神が司る月である6月に結婚することは、やはり女性にとってのこの上ない憧れなのだろう。そして、彼女にとっても。
オーストリアは少し考えた後、こほん、と一つ咳払いをしてこう切り出した。

「ハンガリー、『思い立ったが吉日』という言葉を知っていますか?」
「え?」

物思いに耽るように庭の外を眺めていたハンガリーがオーストリアの方を向く。

「いや、『鉄は熱いうちに打て』…それとも『善は急げ』でしょうか…ええい、そんな御託はどうでもいいのです。とにかくですね、」

突然のことでわけもわからずぽかんとしているハンガリーに、まるで夕食にでも誘うかのような気軽さで、


「結婚、しましょうか。今すぐに」


と言った。




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