Gift

□☆だから僕は溜め息をつく
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 女の子ってどうしてときどきこんなに無防備なんだろう。こと、自分が気を許した相手に対しては特に。眼前で空いたまま揺れるイリアの手を眺めながら、ルカはそんなことを考えた。

* * *

 人通りの多い騒がしい街をおしゃべりしながら歩いてゆく彼女は楽しそう。けれど後ろから僅かに遅れてついていく自分とセットにすると、一体どう見えているのだろうか? 恋人同士のようだったららいいなぁ、なんて思う反面無理だろうなぁ、と冷静に考える自分もいる。

「――それでアンジュが怒っちゃってさー、ほんとスパーダったら馬鹿みたい」
「……うん」

「まぁなんだかんだで仲はいいのよねー、あの二人」
「……うん」

「………リカルドの長髪、あれカツラらしいわよ」
「……うん」
「…ルカ。ルカってばっ!!」

 どかっ、と小突かれた。思わず「うぇ!?」と変な声が出る。ぱんっと帰ってきた意識に任せて正面を見ると、イリアが眉を吊り上げたまま腰に手をあてこちらを睨みつけていた。

「ど…どうしたの?」
「どうしたの? じゃない! あんたね、最近ボーッとしすぎ。特に今マトモにあたしの話聞く気あった!?」

無いでしょ!? との声に思わず小さく肩をすくめた。イリアはこういうとき、相手に弁明の余地を与えないのだ。まぁ今回の場合、例えそれをもらえたとしても有効に使えた自信は無いけれど。

 だからその場をうまく誤魔化す言い方ができず口を開いてはまた閉じるというのを繰り返していると、相手は今度は心配した様子でこちらを見てきた。


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