Novel

□June Bride
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 来た。さっきの誓いの通り、いつものように少しだけ振り返る。何か用? と。

「まぁ用って言ったら用だな…」

 と妙に引っかかる言い方をしながらバルコニーに入り、私の隣に並んだ。それから話しだすねを黙って待ってみたけれど、一向に何も喋らない。さっきからこちらを向いて何か言い出そうとしてはスーツのネクタイを弄ぶだけだった。

「〜〜〜っ、ソウル、いいたいことあるならはっきりしてよ!!」

 ただでさえ私は今大変なのに。
 しびれを切らした私が言うと、ソウルが「わかったての、言うぞ!?」と何か覚悟を決めたよいに言い放った。その妙な気迫に思わず押されそうになる。

「あのな、マカ」
「う、うん」

 何を言われるんだろう。

「その、なんつか…ありがとな」
「――は?」

 今、何て?

「だから、今までありが「ええええええ!?」

 私は思わず叫んでいた。
「え、そんな、なんでよソウル何か悪いモノでも食べたりした?」
「食わねぇよ!! あのな、俺が改めて礼を言うのがさんなに変かよ?」
「うん」

 即答。ソウルは少なからずショックを受けたようだ。

「なんだよ……俺かなり頑張ったのによ……」

「はっははは……だってびっくりしたんだもん、いきなりだったか「いきなりじゃねぇ。ずっと…考えてた」
「え…」

「マカがいなかったら俺、デスサイズにはなれなかったろ? だから…デスサイズになったら、まずマカに礼を言おうって思ってたんだよ。…え、今回は『変』って言わねぇの?」
「……」

 少し意地悪に笑ってみせるソウルに、私は何のリアクションも返せなかった。


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