スキマスイッチ御題
□☆V.焦る僕 解ける手 離れてく君
6ページ/7ページ
「だけどな…確かに色々あって死ぬような目にもかなりの数あってきたけどな、同じくらいの数、お前に救われた気がする」
「え?」
「どんなに情けなくなってもさ、お前だけは遠慮なく俺を蹴り飛ばしてくれたよなー」
「当たり前だ、貴様は意外とちょっとしたことでへこむからな」
「で、お前に蹴り飛ばされてさ、なんかまた頑張らねーとって思ってる俺がいたわけ」
「……。」
キン、と音を立てて背後に扉が現れたのがわかった。それを開いてくぐってしまえばこれでさよなら。
そのせいか一護が少しばかり間を置いて紡ぎ出す。
「だからな…ありがとう」
さよならは言わない。その代わり君に言うのはこの言葉。
「…あぁ」
ルキアがすっと、手を解いた。
「こちらこそ、だ。……ではな」
今度はしっかり目を合わせて。
「おう、じゃあな…元気で」
ルキアが何かを振り切るように戸を開く。そしてゆっくりと片足を越えさせて、ふいに顔だけ振り返った。もう一度だけ相手のブラウンの瞳を見つめて、はっきりと言う。
この言葉を彼は望んではいないだろうけれど、ルキアの中で決着を付けるためには言っておかなくてはならない。
「じゃあ一護……さよなら」
そうして、ルキアは帰って行った。一護の心に最後の微笑みを残して。
「――すまぬ、一護」
がむしゃらに走りながら、ルキアはただ呟く。
「本当は悪いとわかっているが…わたしを忘れた貴様など、想像したくなかった…!」
だから貴方の記憶は残して行く。
それがルキアの、最後の罪。
fin.