スキマスイッチ御題

□☆U.君の話
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 数秒の決して不快では無い沈黙のあと、ルキアがふと俺の方を向いた。と思ったらルキアは妙に芝居めいた残念そうな顔をして

「そんなにわたしがいるのが嫌なら仕方ないな、せっかく差し入れを持ってきたのに…」「差し入れ?」  
 
 興味が湧いて、反射的に聞き返す。

 差し入れそのものじゃあなくて、ルキアが差し入れというのをすると一体どんなものを持って来るのかの方に興味があった。

 すぐに乗ってきた俺に対して案の定彼女は「現金な奴め」と笑った。少し誤解があるようだが、そんなことお互いにとってどうでもいいことであるような気がした。

「まぁいい、せっかくだからな」

と言って、ベッド脇の椅子に座っていたルキアが急に身体を折って足元に手を伸ばす。

 よっ、と持ち上げて見せたのは、小ぶりのバスケット。

 小柄な彼女がそんなものを持って微笑んだりするから不覚にもちょっと可愛いなんて思ったりしないこともないが、問題は…その、中身にあった。

「リンゴと……なんだ? それ」

 バスケットから飛び出す、白い布でぐるぐるに巻かれた謎の物体。厚さは薄い。どうだとばかりに見せつけてくるが、これはどう見ても……

「果物ナイフじゃねーか!」
「ないふ、というのが何かは知らないがとりあえず果物を切る時に使うものだ」
「いやだからそーゆーのを果物ナイフと…まぁいいか。で、まさかと思いますけどね朽木さん、その刃物で…」「もちろんリンゴを切るが?」

何当然のことを確認しているんだ、という顔でルキアは俺を見た。確かに話の流れを見ればその通りだが。

「貴様はまだ起きたばかりだからリンゴを丸かじりするのは面倒だろう?」

 その心遣いはものすごく、ものすごく嬉しいが、それでも…



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