歌詞30題

□22.燃えさかる想いだけを伝えましょう
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例えば、燃えるように赤いその髪だとか、

揺らぐことのない意志を湛えたその大きな瞳だとか、

今まさにティーカップを包んでいるその指先にさえも、

こんなにも惹かれてしまう僕がいること

目の前のお菓子に夢中な君はきっと知らないでしょう?








「イリア」



名前を呼ぶと、君はさも面倒臭そうにこちらを向いた。
手には食べかけのクッキー。



「何よ?」

「いや、その、あの…」



見つめられると途端に言葉が出なくなってしまうのは、出会った頃から変わっていない。
あれ、今僕は何を言おうとしてたんだっけ?



「えと…お、おいしい?そのクッキー」

「は?」



どうしても思い出す事ができなくて、結局苦し紛れの質問をした。



「何、あんたも欲しいわけ?」

「いや、そんなわけじゃ…」



それならそうとはっきり言ってよね、と皿がこちらに押しやられる。
仕方ないから僕はそこから二、三枚取って、ありがとう、と押し返した。

再び向こうを向いてしまった彼女の横顔を見ながら思い出す。


ああ、僕は、君に告白しようとしていたんだった。




「ねぇイリア」



もう一度呼びかける。
今度はあからさまに不機嫌そうに振り向かれた。



「…さっきから何?」

「あ、あのさイリア、僕…」



やっぱりうまく話せないや。
さっきもらったクッキーまでもが口の中でパサついて邪魔をしている。
意を決して大きく息を吸い込んだら、粉が気管に入って思いきりむせてしまった。



「…水、要る?」


「ありがとう…」



そう言って水をいれたグラスを差し出す君は、少しだけ心配そうだった。(僕の妄想かもしれないけど)
それを受け取って喉に水を流し込む。
舌にほんのちょっとだけひっかかっていた勇気まで飲み込んでしまわないように注意しながら、一気に飲み干した。



その間に、例によってまた君は注意を僕から逸らせてしまっていて。
心の中で一つため息。
そして大きく深呼吸。
さぁもう一回その名を呼ぶよ。
どんなに嫌そうにだって、どんなに僕が情けなくたって、君は絶対に振り向いてくれるって僕は知ってるから。





今度は、ちゃんと言えるだろうか。
君が大好きだってこと。










えさかる想いだけを
伝えましょう

(そしたら君はどんな顔をするかなぁ?)











→あとがき.

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