☆小説2☆
□もう一度君に
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「嘘つき…」
キバの口から、一言だけ漏れた。
去っていくであろう言葉。
俺はその小さな背も、震える肩も、零れる涙も、何一つ抱き締めてやれなかった。
ただ、くるりと向きを変えてトボトボ離れていく、キバの姿を見てる事しか。
俺の、1回の浮気が、
キバを傷つけてしまった。
「キバ君っ!」
振り向く事は無いとわかっていても、呼ばずには居られなかった。
あまりにもその後ろ姿が小さくて。
消えてしまいそうで。
すすり泣く声が遠くから聞こえても、何故か足がその場から動かなかった。
追っても、どうすれば良いのか…分からなかった。