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□Celebrate
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「こんな所にいたのか、捜したんだぞっ」

彼女がすぐ傍まできたおかげで今度は不機嫌そうな声がはっきりと私の耳に届いた。
目の前の声の主、短く切り揃えられた紅色の髪とマニッシュな風貌で一見すると少年のようだが、"彼女"は私とレゾナンス(契約)したマスター・ソウヤ アキラ。

「ごめんなさい、アキラちゃん…」

どうやら私はあの教会の人集りに気を取られている内にアキラちゃんとはぐれていたらしい。
マスターの傍にいなければならないのに…これでは怒られても仕方がない。
落ち込む私を見てアキラちゃんはひとつ溜め息をついてから今度は優しい声色で、
「気付いたらいなくなってたからさ、迷ってたらどうしようとか思ったら焦って、怒るつもりはなかったんだ、ゴメン」と付け足した。

「アキラちゃんが謝る必要は無いわ。途中で気になるもの見つけて足を止めた私が…」
「気になるもの?」

話の途中で聞き返されたので私は海の方にある教会の人集りを指差す。
アキラちゃんはすぐに私に視線を戻して軽く笑った。

「アハハなんだ他人の結婚式に見入ってたのか、本当に物好きなんだなドラゴンってのは―」

「…?『けっこんしき』ってなにかしらアキラちゃん?」

「え?」
聞き返されると思ってなかったのか一瞬驚いた顔をしたがすぐに「あー…えっと、アレだ!運命を変えるおまじないみたいなもんだっ」と答えてくれた。

―おまじない…だとしたらあれは随分大掛かりなものだ。
毎度のことだけど、アキラちゃんの回答はどこか曖昧で胡散臭い気がする。
一方の彼女はウンウンと何か勝手に納得しているみたいだけれど。
逆に疑問が深まってしまった私は"百聞は一見に如かず"という言葉を思い出し、「私達も出来る?」と聞いてみた。

さっと彼女の顔色が変わる。

何故か言葉に詰まっている感じだった。

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