Waffle
□Starry Sky
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季節は冬。
いつの間にか年末、12月になっていた。
「寒くないのか?」
空気が澄んでいる。
肌に突き刺さるような北風の痛みにも気付いていないように、窓を開け放ち、夜空を見つめる成樹に不破は声を掛けた。
振り返った成樹は、少しな、と笑い掛けてくる。
そしてもう一度空を見返し、再び向き直って。
「不破、外見てみ。星がすごいで」
手招きされて窓辺へ向かい、成樹の隣に立つと視界に広がる、驚くほどの星空。
「でも、此処はまだまだ少ないわ」
光輝く沢山の淡い星の光を映すその瞳は、どこか懐かしそうで。
「佐藤?」
「せやけど、何処で見ても綺麗やなって思う」
話しながら空を見上げたままの不破に寄り掛かってくる成樹を背中から抱きしめ、ゆっくりと二人、その場に座った。
思った以上に温かい不破の体温を感じた成樹は、体を預けて再び空を見上げる。
思った以上に冷えていた成樹に気付いた不破は、抱きしめた腕に力を込めてそれに習った。
暫く眺めていた星空に、ふっ、と成樹が吹き出した。
「…佐藤?」
くっくっと笑いながら、すまん、と顔だけ不破を向き、
「めっちゃガキの頃のこと思い出してん」
何処か、懐かしそうに笑いながら。
「昔、屋根に登ってな、長い棒持って星叩き落とそうとしたことあったなー、て」
「星を?」
「取れるて信じとったんやろな。最初は手ぇ伸ばして届かへんかなって、…伸ばし過ぎて屋根から落ちかけたこともあったんに」
懲りへんやろ、と子どものような笑みを浮かべる。
いつから、こんなふうに話すようになったのだろう。
昔は自分の事など、どんな言葉のひとひらにさえ、乗せなかったのに。
話に熱中し、ふと目が合えば僅かに顔を紅潮させて照れ笑う姿を、もう何度見ただろう。
「…俺にも経験があるな」
「へ?」
「星に手が届くか手を伸ばした事がある」
無論、不可能だったが。
言葉を失って茫然としているように見えた成樹が、突然堰を切ったように笑い出す。
「うそぉ!?不破が!ほんまっ!?」
「…そこまで笑う事か?」
お前ほど酷くは無いぞ。
バツが悪そうな顔をする不破が、更に笑いを引き寄せる。
「やっ…すま…っ」
必死で堪えようとも、笑いが止まらないようで。
「ふ…不破も同族なんやて…安心したっ」
「俺を何族だと思っていたんだ」
「ごめんて。っせやかて不破が…っ」
落ち着いたと思えばまた思い出して吹き出しながら、可愛い子どもやったんやな、と屈託無く笑う。
さすがに馬鹿にされた気がして不満を無表情の中に込めると、すぐに気付いた成樹が目に溜まっている涙を拭い、抱きしめられている不破の両手に、指を絡める。
「めっちゃええ話、聞かせてもろたわ」
まだ少し潤んだ瞳で、それでも穏やかな表情で成樹が笑い掛ける。
どこか年上の余裕を見せる様な成樹を、寒さを理由に強く、抱き寄せた。
*****2004/12/20
最近夜になると天気が良くて、暗がりの中で帰宅するときにぼけ〜っと見ながら歩いていることがあります。
例のごとく電柱にぶつかったり側溝に填りそうになったりしなくなったから、成長しましたよ、笑。
そんな感じで、今回は星空を見上げるシゲと不破のお話です。
何となく頭によぎった単発文なので、もういいんです、何でも突っ込んでください。弱。
どうも有り難う御座いました☆
タイトルは「星空」です。