Waffle

□funny short story
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U-15代表合宿。

「お疲れさん、不破。昼飯どないする?」

午前の練習をすべて終え、空腹感が漂う中、腹拵えに向かう他のメンバーを尻目に成樹が不破に問い掛ける。

「食堂へ行くつもりだが?」

答えた不破にビニール袋をちらつかせ、

「あんな、パン買うて来てん。外で食わへん?」

折角の天気やし〜。と、明らかに不破の分もあるであろう大きな袋を掲げ、成樹がニッと笑んだ。



「おっ、ええもんあるやん」

合宿所の隅の木陰にベンチを見付け、不破の手を引いて座るように促す。

その隣に座った成樹は、突然袋を逆さまに引っ繰り返した。

中に入っていたパンは当然の如く重力に従い、成樹の膝の上にドサリと音をたてて落ちてくる。

主食になりそうなサンドイッチから、そうでもなさそうな菓子パンまで。

幅広い種類のパンが成樹の膝を色付けた。

「いっぱいあるさかい、好きなの食べや」

「……」

そのあまりにも大雑把な行動に呆然とする不破に目もくれず、パンを一つ手に取り、頬張る成樹の幸せそうな顔を見、思わず苦笑する。

「ん?どないした?」

「否、何でもない」

「?…そ?」

苦笑気味に自分を見ている不破に首を傾げて見せ、取り敢えずパンをもう一口頬張る。

外で昼食を食べるということがとても久しく感じられた。

「何や、遠足みたいやなぁ」

「これだけ自然に囲まれているからな」

不破の返事に、空気がちゃうな、と返しつつ、成樹は遠くを見やった。

重なり合う葉の間から差し込む柔らかい陽の光。

不破はその光を反射し淡い輝きを増した金色の髪を見つめた。

深緑に映えるその髪を無造作に一つに結い、癖なのだろう遠くを見ている。

合宿所の周りは緑色の絨毯が敷かれているかのように木々が広がり、成樹の云う通り空気がとても澄んでいた。

時折、微かに聞こえる鳥たちの囀りが心地よく耳元に届く。

爽やかな風が吹く、穏やかで静かな昼時だった。が。

「カズさ〜ん!!!」

その静けさは、何とも情けない声で打ち崩されてしまった。

その不意打ちの大声に、驚いた成樹が飲んでいたコーラを吹き出しそうになり、激しく咳き込む。

「せからしか!ついてくんな!!」

九州選抜から代表に選ばれたDFの高山昭栄とGKの功刀一の登場である。

「…っゴホ…何や賑やかやなぁ」

「大丈夫か?」

涙目の成樹の背を擦っていると。

「何や、人おったとか」

二人に気付いた一が、後ろを気にしながら声をかける。

「ここでメシ食い‥て、なん?金髪具合悪いと?」

「…おかげさんで…」

まだ微かに涙の残る目で苦笑していると、

「カズさんっ!!」

やっと姿を見つけたらしい昭栄が、勢い良く一に抱きついた。

「すんません!さっきんミスは俺が甘かったからですっ!!俺が…」

云い掛けた昭栄の腹部に、凄まじい肘鉄が食い込む。

声にならない痛みに悶える昭栄に構わずに、自分よりも15センチは高い体を難なく払いのけた。

実に鮮やかである。

「暑い、重い、せからしい。抱きつくなっち云いよろーが、こんボケが」

「す…すんませ…」

地面に蹲って痛みをやり過ごしながら、涙目で昭栄は謝る。


好意と恐怖を持っている飼い主に躾られている大型犬。

そんな光景。


「…下らんミス含めて、分かっとーとか?」

「はい…」

しょうがない、と云わんばかりの溜め息の後、一は未だ腹部を押さえて座り込んでいる昭栄の手を引き、立ち上がらせてやる。

見下ろしていた昭栄を見上げなければならなくなった事に軽く眉を寄せながら、じゃあ後でな、と成樹たちに告げて去って行った。


「…扱い慣れとるな」

「そうだな」

危険回避の為、この場を離れようと試みていた二人は、嵐のように去った昭栄と一に感嘆の声を盛らした。





*****2003/08/06
SHOW姐、待たせた上にこんなのでごめんなさい…、反省。
頭の中は年中ギャグ大会なのに書き出すのは難しかったわ、苦笑。
甘いのなら任せて下さい。砂を吐かせる自信ありますので!笑。
懲りずにまたリクしてくださいね。
どうもありがとうございました!

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