Waffle

□Reason to love
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あの人間について述べるとしたら、まず金色の髪を挙げる。

それは何処に居ても視界にちらつき、居場所を主張しているように見える。

本人は地毛だと云っているが、事実嘘だろう。

それが不思議と似合っている辺り、整った顔立ちであると云える。

次に、あの眼。

元来色素が薄いのか、茶に近い大きな眼と、その視線が何処か気に掛かる。

それに見つめられる、と云うより見据えられると、目を逸らすことが出来ない上に、軽く心拍数の上昇を覚える。

しかしそれは敵意どころか居心地の良ささえ覚えるものだ。

それに加えあの笑顔は曲者で、多くの女子を魅了するが、その真意は測り難い。

分かり易そうに見えて、意外にそれに隠れて本心は見えない。

感情や気持ちに正直な様でいて、それ程そうでない事を、あの笑顔は隠してしまう。

その辺りがあの人間の扱いにくい所でいて、惹かれる所である。

そんな人間の隅に見せる素直な感情に触れていたくて手を伸ばせば、それに気付いた事に驚いた表情を見せたりして、面白い。

そんな時は微かに表情が和らいでいるらしく、指摘さてれ、あぁ、自分はこの人間が好きなのだと再確認するのだ。




「不破?」

ふと声を掛けられ視線をずらすと、何時の間にか成樹が隣に座っている。

気が付けば、校庭から下校中の生徒の騒めきが聞こえていた。

午後から大きな会議が開かれ、各学校の関係者が多数集まるため、校庭が臨時駐車場として使用される。

確かそんな理由で校庭を使う部活動は中止になっていた事を思い出した。

「何してたん?帰らへんの?」

「……」

微笑いながら尋ねてくる成樹に、そっと手を伸ばし、頬に触れる。

一瞬ビクリとした成樹は、しかし、その手にゆっくりと自分の手を重ねてくる。




伸ばした手を止めようとしない辺り、嫌われてはいないらしい。




「…お前の事を考えていた」

「俺?悪い事ちゃうやろな」

不破の言葉に、成樹は苦笑しながら首を傾げた。

「聞くか?俺がお前に抱いた感情の一部だ。始めに…」




様々な感覚、特に言葉に関しては極端に敏感で。

他人からすればストレートを極めているらしい俺の言葉に、馬鹿、と云って叩きながらも顔を紅潮させることもしばしばある。



「…っ」

「つまり…」

「っもうええわ!!」

考察結果を続けようとする不破に、案の定、赤面した成樹が照れ隠しに両手で押し退けてくる。

その手を引き寄せるとバランスを崩した成樹が倒れこむように胸へと収まった。

暫らく抱き締めていると、やがて成樹が体を預けてきた。

「佐藤?」

「…ん、センセ温かいんやもん。眠なったわ…」

ここ、居心地ええから暫らく貸してや。

腕の中から聞こえた声に愛しさを覚え、髪を撫でる。

「お…きに…」


眠るか否かの状態で、成樹はふと顔を上げると、緩慢な動作で一度だけ、唇を寄せてきた。

驚いた不破の顔を見、満足したように笑うと再び体を預け、小さな寝息をたて始めた。




気紛れにじゃれてくる所も。

気を許し、羽根を伸ばすように甘えたがりになる所も。

こちらを困らす予想外の行動も。

全てを含め、俺はこの人間に興味及び好意を抱いているようだ。


以上、俺、不破大地による佐藤成樹に関する考察である。





*****2003/02/17
伶於姉、お待たせしました!そして何だかなぁ‥な雰囲気でごめんなさい。苦笑。
もう少しくらい甘くすれば良かったですね、短い…。
つかこの後、大地がどうしたのかが気になったり。笑。一緒に寝たんだろうと思いますが。
話を作るより作った後にツッコミ入れたり後日談を考える方が好きだったりします、笑。
どうも有難うございました!

タイトルは「愛しさの理由」という意味を込めて。

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