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□この世界の道標
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※原作沿い・ネタバレ有りですので、ご了承いただける方のみ御覧下さい。
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アイツがいなくなってから、私はゼラさんと少し話をした後、もう一度事務所に戻った。
アイツがさっきまで寝ていたソファをそっと撫でた。既にアイツの温もりはなく、ひんやりとした感触は淋しさを掻き立てる。
どの位そうしていたのだろうか…。
ドアの開く音がして顔を上げた。
「おい…どうした?アイツは?」
「ネウロなら帰ったよ…」
心配そうな顔をした吾代さんに答えた。
「アイツ…このまま此処にいたら、死んじゃうんだって。でも…帰ったらまた此処に戻ってこれるかわからないみたい」
「そうか…」
吾代さんの顔はいつになく穏やかで、私の腕を引っ張ってソファから立たせると抱きしめてくれた。
それは温かくて…心地よかった。
「吾…代さん?」
「何か上手く言えねぇけど…今は泣いてもいいと思うぜ」
頭を撫でてくれる手が温かくて優しくて、私は自然と涙が零れた。
「もう泣かないって約束したのに…強くなるって…」
「お前は充分強ぇよ。…だけどたまには泣いたっていい。そんときはオレがそばにいてやるよ」
私は黙って頷いた。