咲き匂う花
□触れたい
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花も綻び始めたまだ少し寒さの残る二月。
庭で赤く色づき始めた梅の蕾をじっと無表情に見つめる男が一人。
「泰明殿」
風を伝う声と香に、名を呼ばれた泰明はそちらを向く。
「何の用だ、友雅」
「おや…つれないね。一緒に花見でもと思ったのだが…一人で始めていたとはね」
「わざわざ花を見に来たのか?奇特な奴だ」
「…ふふ。何も花は梅だけとは限らないけどね」
ふわり、と。
顔を寄せてきて何かと思えば…何かが触れた。
「…友雅」
泰明は小さくため息をつく。
「ふふっ。そんな怖い顔をしないでおくれよ」
泰明の頬に指を滑らせながら、友雅は笑う。
「花も綻び始め…恋の花も咲き始め、というわけだよ」
「何を…」
「泰明さんこんにちわ。あ、友雅さんも来てたんですか」
泰明の非難の声を消すようにあかねが向こうから走ってきながら叫んでいる。
「おや?泰明殿と逢瀬かい?…神子殿もなかなかやるねぇ」
ふふっとからかい混じりの笑みを浮かべて友雅は息を切らしているあかねに話しかける。
「なっ!何言ってるんですかぁ!もうっ」
急いできたためか、友雅のせいか頬を紅潮させるあかね。