桜下恋想

□雨の切れ間に訪れて
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夜も更け、シンッと静まる新選組屯所。
いまだ起きていた者も、灯りを消して床につく。

永倉と共に晩酌していた原田も、早々に永倉が酔い寝いってしまった為、永倉の部屋を後にした。

先程まで降っていた雨は上がり、雨上がり特有の、澄んだ空気が酔った頭を僅かに冷ます。
梅雨に入ってからというもの、ほぼ間断なく大小の差はあれど雨は降り続く。
空模様は常に曇り、気が滅入りそうだ。

しかし、今宵は月を覆う雲もなく、僅かな時だろうが、綺麗に晴れていた。

原田が月を眺めていると。
不意に、どんっと背中に何かが当たり、原田が振り返り見た先に。
俯いている為顔は見えないが、その身に纏う羽織と、夜の中でも独特な髪色。
ふと上げられた顔、見つめてくる紅に。

原田は無言でその者の手を取り、自室へと急ぐ。
背後から控えめに「原田、痛い」と声が掛かるが聞き流し、無事に部屋へ着いて、原田は大きく溜め息を吐いた。

「風間、お前いきなり来んじゃねぇよ、ビビっただろ……他の奴に見つかったら、どうすんだよ!!」

努めて静かに原田が言うのに対し、風間はしれっと返す。

「俺がそのようなヘマをするものか……来ては、いけなかったか?」

最後の部分をしゅんと肩を落とし言う風間に、原田は困ったように苦笑する。

「いや、嬉しいけどよ……一応、お前にとっちゃ敵陣真っ只中だろ、此処は。そんな、危険を犯す必要ねぇって」

「……貴様が……会いに来ぬから、」

俯き小さく溢すのは、恥ずかしいからか。
会いたいと、思ってくれたのか。
その思いのまま、会いに来てくれたのか。
そう思うと、嬉しさと愛しさが原田の胸を満たす。

「風間」

名を呼んで、そっと顎を掬い顔を上げさせれば、拗ねた表情で紅が睨みつけてくる。

「ありがとな、会いに来てくれて」

柔らかい笑みと共に言えば、風間も小さく笑みを返し、その紅がそっと閉じられる。
誘う仕草のそれに逆らわず、原田は唇を重ねる。

「んっ…」

首に腕を回した風間が、そのままゆっくりと腰を落とすのに引かれ、原田もその場に座す。

柔らかい唇を啄むような口付けは、次第に深くなり、舌が絡み合う。
互いの唾液が混ざり、くちゅりと音を立てた。

唇を離すと、欲を点した瞳が見つめあい。
言葉は無く、原田が頬に唇を落とすと傾ぐ風間の体に、原田は微笑む。

首筋に唇で触れ、帯を僅かに弛めるだけに止め、大きく衿を開いた原田は、胸へと唇を移動させる。

露になった胸の粒を舌で舐め上げると、風間の体は小さく震える。
一方を口内に含み、もう一方は指先で可愛いがれば、声を上げるのを厭い、風間は己の手で口を押さえてしまう。
残念だとは思うが、場所が場所だけに仕方ないか、と原田はその手を取る事なく行為を続ける。
赤く熟れた果実のような粒は、ジンジンと疼くようなもどかしい快感を風間に与える。

「はっ……ん、は、らだ……ぁ」

殺した声が、甘さを纏い名を呼ぶ。
卑猥に尖り立つ粒を、原田が甘噛みすると、風間の体は跳ね、白い喉を無防備に晒し仰け反る。

「あ、ぁっ……」

潤む瞳が咎めるように睨むが、そのような態度は原田を煽るだけで、欠片程の抑止力もない。

いまだ閉じままの下肢へ原田は手を伸ばし、裾を割り開き、太股を手の平で撫で自然と開く足の間に身を置く。
素直な反応に、原田が「淫乱」と溢すが、それに含まれるのは嘲りや揶揄ではなく、愛しさ。
それが分からぬ程の仲でもないから。

「貴様にだけ、だ……嬉しかろう?」

妖艶に口端を上げる風間に。
身を屈め。

「あぁ、堪らねぇな」

耳元で返し、唇を合わせる。
舌を絡ませつつも、風間の下帯を外した原田の手は、そのまま、立ち上がり先端からとろとろと蜜を溢す風間自身へと指を這わせる。
敏感な箇所への直接的な刺激に、上がりそうになる声は、重なる唇によってくぐもった吐息に変わる。

手の平で包み、緩く扱くと、合わせるように風間の腰も揺れ、原田の手へと自らを擦りつけるように動くが、恐らく風間はそれに気づいていない。

呼吸の為に微かに唇を離すも、それはほんの数瞬。
少しでも離れるのを厭うように、磁石のように唇は合わさり、互いを貪るように舌を絡ませる。




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