桜下恋想2

□傍にいる日
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*SSL/良い夫婦の日ネタ




「近藤、今日は一日ここに居ても良いか」

場所は校長室。
朝のHRも始まる前に、校長室に居る近藤の元へ来た風間は、やけに真剣な眼差しで近藤を見つめていた。
二人でソファに座り、しばし見つめ合う。

「……風間君、授業は?」

「今日一日くらい、どうという事は無いだろう」

校長である近藤に、一日の授業全てをさぼると、平然と言ってのける風間。
近藤は困ったように風間を見るが、何故か"今日一日ここに居る"という意思は固そうだ。

近藤と風間は恋人同士で、一応本人達は隠しているようではあるが、学園内では二人の仲は有名であった。

「今日は、何かあるのかい?」

近藤は、まず理由を知ろうと、逆に風間に問う。
すると、風間は仄かに頬を桜色に染め、気恥ずかしいのか、僅かに俯く。

「今日は、その……11月22日だ」

「う、うむ」

「不知火に聞いたのだが……11月22日は『良い夫婦の日』と言うらしく……夫婦や恋人同士は一日中一緒に居て、あ……甘え合っても良い日だと…」

喋るにつれ、頬は更に赤く、声は小さくなる。

「風間君」

11月22日が『良い夫婦の日』と呼ばれている事は、今知ったばかりの近藤であるが、
そう呼ばれている日に、共に居たいと言ってくれる風間が可愛く、目の前にある頭を撫でる。

「だから今日は、お前も俺に甘えたら良いと思ってだな……」

ポソポソと小声で言う風間に、近藤は優しい笑みを浮かべる。
愛しくて堪らない、と表情が語る。

「風間君」

さらさらの、手に心地良い金糸の前を上げ、額に口付ける。

「気持ちはとても嬉しいが、やはり授業には出た方が良いよ」

恋人としては、このまま一日一緒に過ごしたい。
しかし、校長としては、授業をさぼるのを容認してはいけないだろう。
近藤の言葉を聞くと、風間はしゅんと、悲しそうに肩を落とす。
その様に、近藤が慌てて声を掛けようとした時。

「おい、風間!!校長室のドアに変なもん貼ってんじゃねぇ!!」

ノックも無しに、土方が入って来た。
手には一枚の紙。
不機嫌さも露に、その紙を二人の前にある机の上に叩きつける。

「『貸切。生徒会長・風間』って、馬鹿かてめぇは!?」

紙にはそう書かれていたらしい。
しかし、土方の怒声に風間は反応せず、ただ俯いている。

「おい、風間?」

常ならば、土方の一言に二・三の嫌味を返す風間が、何の反応もしない事に、土方は怪訝そうに眉を寄せる。

「トシ…今は、その……」

「あー…何だ、取り込み中だったか」

「…土方」

風間は顔を上げると、若干気まずそうにする土方を、睨み付ける。

「今日は『良い夫婦の日』らしい」

「あぁ!?…だから何だよ?」

「今日一日、この部屋に来て俺と近藤の邪魔をすることは許さん」

「邪魔って…てめえ、言ってくれんじゃねぇか」

言い争いを始めた二人を、近藤は困ったように見つめていたが。
元気になったらしい風間を見て、そっと笑みを浮かべた。






結局その日、風間は校長室(というより)近藤の傍を離れずに過ごした。






UP/10.11.23

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