桜下恋想2

□触れて、触れて
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*ブログからの移行



「嫌だ、と言っているだろう、しつこいぞ貴様」

苛立ちを隠さない冷たい声が、ピシャリと響く。
自室で書物を読んでいた風間の元に土方が来て、一刻ばかり。
ある事を頼む土方に、風間は最初のうちこそ静かに拒んでいたが、なかなか引かない土方に怒りと呆れを露にする。

「なんでだよ、ちょっとだけで良いって言ってんだろ」

なおも食い下がる土方を、風間は溜め息を吐き睨む。

「貴様は見るだけでなく……触るから、嫌だ」

微かに頬を朱に染め、俯く。
土方が頼んできている事は、風間の鬼の姿が見たい、というもので。

「仕方ねぇだろ、お前の角、スベスベしてて触り心地良いんだよ」

「……仕方ないとは、なんだ。触られる俺は、嫌なのだぞ!?」

声を荒くする風間に、土方は笑みを浮かべ風間を抱き寄せる。

「へぇ?嫌がってるようには見えねぇけどな?」

腕の中から逃れようと身動ぐ風間だが、土方の唇が頬に触れると抵抗は弱くなる。

「土方……」

「お前だって、触られんの気持ち良いんだろ?だから嫌なのか?」

「違うっ」

挑発するように土方が言えば、風間はすぐ反論するが。

「じゃあ、良いじゃねぇか……鬼の姿のお前も、俺は好きなんだよ。たまには見てぇって……そう思うのは駄目か?」

少しばかり寂しそうに溢す土方に、風間は戸惑い、何かを言いかけるものの結局口を閉ざし、きゅっと目も閉ざす。
途端、髪の色が根元から変化していく。
金から白銀へ。そしてその額に鬼の証である角が現れる。
土方の口角が上がる。
白い角は真珠のように光沢があり、美しい。

「あぁ、やっぱ綺麗だな」

呟き、手を伸ばし指先で角を撫でる。
風間の肩がぴくりと、小さく跳ねる。
瞳は何かに耐えるように閉じたままだ。

土方はゆっくりと、指を滑らせる。
大小合わせて四つある角を、額の生え際から先端まで、優しくゆるゆると辿る。
風間の息が徐々に乱れていくのを、土方は気づかぬふりをし、あくまで角の手触りだけを楽しんでいるのを装う。

風間の快感を引き出す箇所はいくつかあるが、その中でも角は一番感度が良い。
そして、角を触られた時の風間は、常より数倍素直になり求めてくる。
風間の吐息は熱を含み、もどかしそうに腕の中の体を更に土方に寄せてくる。
甘みを帯びた声を漏らし、伏せていた瞼を上げ、潤んだ瞳で土方を見つめる。

「どうした、風間」

風間から求める言葉が欲しくて、土方は白々しく問う。

自ら求める事を浅ましいと感じる風間は、羞恥と、それでもより強い快感が欲しいのとで、瞳を一層欲で濡らす。

「あ、……触って……貴様に、触られ、たい…」

風間の口からその言葉を聞き、土方は笑みを深める。
この状態で一度欲しがる言葉を言わせてしまえば、後は土方が望むまま口にしてくれる。

「何処を、触られたい?」

問いかけ、角に唇を寄せ舌を這わせる。
艶のある声が上がり、身を震わせる風間の襟元から胸へ手を差し込む。

「っ、ぁ……は、全部……触って……」

差し込んだ土方の手を追い、風間の手が土方の手を取る。
土方の手を自ら胸の突起へ誘い、手の平に擦り付けるように体を動かし始める風間に、土方は苦笑する。

「全部って……欲張りだな」

言いながら、ゆっくり風間の体を横たえる。

「仕方ねぇな……たっぷり、時間かけて、全部触ってやるよ」

そう声をかけ、唇を重ねた。
この数日、風間は頭領の仕事が忙しく、放っておかれて拗ねた土方が仕掛けた意地悪。
結局、土方は事が済んだのち風間に怒られる事になった。











ブログup/2011.09.05.

こちらはピクシブにも載せているものです。

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