シリーズ物
□入学式
1ページ/1ページ
春。
桜も咲き、人々が「春」というものに期待し、微かに浮かれている、そんな季節。
土方は高校に無事合格し、今日はその入学式だ。
式の会場となる体育館では、真新しい制服に身を包み、そわそわと辺りを見回している者。友人同士でこれからの高校生活を語り合う者、自己紹介をし合う者。
そんな新入生で溢れ、ざわざわとしている。
教師の指示に従いクラスごとに席に付かされ、開会のアナウンスが流れ、ようやく静かになる。
土方は、同じ高校を受けた知り合いがいない。
着席したことで、漸くほっと息をつく。ちらりと隣を見て、土方は目を見張る。
隣には、目にも鮮やかなひよこ色の髪の者が座っていた。
「なぁ、お前…」
名前は当然知らないが、クラスごとに横一列に座らされているので、同じクラスだ。
小声で話しかけると、男は土方に視線を寄越す。
向けられた目を見て、土方は更に驚く。
瞳の色が、紅玉のように赤い。
「何だ?」
不思議そうに首を傾げ、小声で返してくる。
「え…いや、その髪、怒られなかったのか?」
「これは地毛だ。教師にもちゃんと証明して、許しは得ている」
気を害するでもなく答え、前を向いてしまう。
「俺は土方歳三ってんだ」
「…風間千景だ」
「なぁ、その目も自前なのか?」
問いかけに、再び土方に向けられた顔は少し不機嫌そうで、短く「そうだ」と返し、赤い瞳は土方を睨む。
「へぇ……綺麗だな」
土方の言葉に、風間は驚いたように目を見開く。
「な、何だ?俺、変な事言ったか?」
「いや…そんな風に言われたのは、初めてだ」
小さく呟き、俯いてしまう。
どうやら照れているらしい。
壇上ではまだ校長だか教頭だかの話が続いている。
隣で風間が小さく欠伸を漏らすのを見て、土方は小さく笑う。
教師達の長い話が終わり、新入生代表挨拶の時。
新入生は全員起立しなければいけないが、土方は立てずに、困ったように己の肩を見やる。
眠気に負けてしまった風間の頭が、そこには乗っていた。
校舎の、体育館が見える廊下では上級生達が、賑やかに通り過ぎながら、又は立ち止まり新入生を眺めている。
「原田、何見てんだよ?」
「不知火。いや、今年は目立つのがいるなぁって、思ってよ」
式が終わり、体育館からぞろぞろと出てくる新入生達。
全体的に黒い集団の中に、金色が一つ。
「お前が目立つとか言うかぁ?そんな、あっかい髪してよぉ」
原田の隣から外を見た不知火が、「ああ、あれか黄色の」と相づちを打つ。
「まっ、学年が違うと、あんま関わんねぇけどな」
「まぁな」
春の穏やかな風が吹く。
彼らの未来に幸多からんことを。
終
ブログup/2011.02.08
加筆修正などはしてません…
読み返すと、なんか凄く恥ずかしいですね、これ
.