桜下恋想記
□艶美なる
1ページ/2ページ
褥の上に、その身を優しく横たえ唇を重ねる。
風間の唇は、何度味わっても甘く、私の心を蕩かせ、体を熱くさせる。
着物の帯をほどき、開けた胸へと手を滑らせる。
「は……ぁ、天霧…待て」
首筋に唇を落とした時、風間の手がやんわりと私の肩を押し戻す。
「なんです?」
「いや……今夜は、俺も……するから」
必死な様子で、言ってくる。
「するって…」
「だから、その……前に言っていた、して欲しいってことを……その、つまり…」
恥ずかしいのか、しどろもどろな言葉に、ふと思い出す。
少し前の情事の時に、「今度は口淫でもお願いしましょうか」と、己の言った言葉。
その時は、考えておくと返された。
まさか覚えていたとは思わなかったし、本当にしてくれるとも思っていなかった。
風間と肌を重ね、身を交えるだけで、充分私は満たされるので。
何もしてくれなくても一向に構わなかったが、してくれる気になったのなら、断る理由は無い。
「天霧?」
黙り込んだ私を、不安げに見つめてくる風間の頬を撫で、「良いんですか?」と問えば、一寸躊躇った後、こくりと頷く。
「では、お願いしましょうか」
「あ、あぁ…」
横たえた風間の体を起こし、己は座る。
座った私の袴の腰紐に、緊張の為か、微かに震える手が伸ばされる。
ひどくゆっくりと紐を解く。
シュッと、小さく衣擦れの音が立ち、下帯が外され、私のまだ何の反応もしていない自身が、風間の手により姿を表す。
そこで、私に視線を向けてきた風間の表情は、頼りなげだ。
髪を梳くように撫で、声を掛ける。
「風間、無理せずとも良いですよ」
その言葉に何を思ったのか、拗ねたように眉を寄せる。
「無理など、していない。貴様に出来て、俺に出来ぬわけがなかろう」
意地っ張りというか、何というか。
苦笑が漏れてしまう。
風間は、一度深く息を吸ってから、身を屈めてくる。
恐る恐るといった具合に、自身に唇が寄り、舌がそっと触れてくる。
手で緩く扱きながら、舌で先端を舐める。
その様は、子犬がじゃれているようにも見え、擽ったい気持ちになる。
正直、その動きは稚拙だが、私に快感を与えようという必死な思いは伝わってくるので、愛らしくて堪らない。
風間自ら口淫を持ち掛けてきたという事と、その光景に、徐々に自身は熱を持ち始める。
「風間……もっと、奥まで咥えて、…そう」
頬を撫で指示すれば、素直に奥まで受け入れる。
「歯を立てないよう、唇を使って扱くように動いて……そう、貴方は覚えが早いですね」
実際、最初のたどたどしさは無く、くちゅくちゅと音を立て、舌と唇を動かす様子は初めてには見えない。
「んっ……ふ、ぁっ……」
懸命に舌を這わす瞳は欲に塗れ、風間の体は微かに揺れ出す。
頭に手を置き、髪を弄っていると。
風間は、私の自身から唇を離し身を起こす。
戸惑ったように、見つめてくる瞳。
「天霧……俺は、おかしいのか?」
「は?…どうしたのです、急に」
「いや、その……俺は、まだ何もされていないのに…」
呟き俯く風間。
その様子に、思い至り、風間の自身へと手を伸ばす。
下帯を濡らしている自身は、確りと熱を伝えてくる。
下帯を外してやると、すっかり勃ち上がり、滴を溢す自身が露になる。
「私のを舐めて、感じていたんですか?己が突かれる様を想像して?」
俯く風間の耳元に唇を寄せ、囁く。
「ばっ、馬鹿者……そんな事、聞くな」
暗い中でも、今の風間の頬が朱に染まっているだろうことは、容易に想像出来る。
「では、下の口の方でも、味わって頂きましょう」
「貴様……もう少し、言い方とか…」
「折角ですから、座ったまま、しましょうか。
風間、膝で立って私の腰を跨ぐようにしてみて下さい」
「ん……こうか?」
情事中の風間は、やたらと素直に私の言う事を聞いてくれる。
普段からこう素直だと良いのだが。
向かい合う形で、風間が私の腰を跨ぐ。
とろとろと、滴で濡れる風間自身に指を絡め、指を濡らしてから、自身の更に下にある窄まりを撫でる。