企画小説

□20171224-土風
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*現パロ/クリスマス



クリスマスに、風間が何か企んでいるらしい、そう気付いたのはクリスマス当日になってからだった。

幸い、今年はイブが日曜日だったから、イブにも一緒に買い物にも出掛けた。
夜に少しだけワインを飲んで、俺はプレゼントを渡した。

風間は困ったように受け取る。

「俺は明日渡そうと思っているのだが」

「あぁ、別に構わねぇよ。…俺も、明日のほうが良いか?」

「いや、受け取っておこう。だが、開けるのは明日まで待つ」

小さな包みを眺め、楽しみだな、と呟く風間に笑う。
本当は、一緒に暮らし始めて初めてのクリスマスだから、もっとちゃんと何かしたいと思っていたのだが、風間に「家でゆっくりしたい」と言われてしまった。
一緒に暮らすまでの風間は、誕生日などのイベント事にはやれレストランだのホテルだのと外出したがっていたから、これは意外だった。

今さらながら、本当に家で過ごしていて満足しているのだろうかと不安になる。

「なんだ、土方、おかしな顔をして」

「いや、…今日は本当に、どこにも行かなくて良かったのか?」

クリスマスらしさなんて、部屋の隅に置いているツリーくらいだ。
昼間に少し買い物に出たが、それも日用品の買い出しだ。

「何だ、そんな心配をしていたのか。俺は本当は、貴様が居ればどこでどう過ごしていても楽しい。外出すれば、貴様を独占出来る時間が増えると思っていたのだ。今は一緒に暮らしているからな」

さらっとそんな事を言う風間。
可愛い事を言ってくれる。

「それに、貴様も年末で仕事が忙しいだろう。疲れている恋人を、こんなどこもかしこも混雑しているだろう日に連れ回したりはしないぞ」

一緒に暮らす前は連れ回してたろ、そう思うも、風間の気遣いは嬉しいので口にはしない。
優しい俺を褒めろと言わんばかりの風間の表情に、俺は苦笑するしかない。

明日は仕事だからと、その日は早々に眠り、朝は普段通りに過ごした。
家を出る間際に、風間が「今日は楽しみにしていろ」と子供のような笑みで言ってきた。

仕事は年末とあって忙しく、その上クリスマス当日だからだろう、社内もどこか浮き足立ちソワソワとした様子だった。

朝の風間の笑みの為、なんとか定時に仕事を終え、帰路についた。
あれは、絶対に何かを企んでいる顔だ。
何をしてくれるのかと、あれこれ考えてみるが、何せ相手は風間だ。
豪勢な食事が用意されている、なんてのは普通過ぎる。あいつは何時も俺の予想の斜め上をいく。

帰りの電車の中で、短く今帰宅中だと伝え、俺はまた考えを巡らせた。


家について、ただいまと入って、静かなことに気付く。
灯りが点いているから、風間は帰宅しているだろう、出迎えがないのは常のことだが、なんの物音もしない。
リビングに行く前に寝室に寄って、着替えるが、その数分の間も静かだ。
どこかに出掛けてるのか?そう疑問に思い、リビングに向かって、俺は絶句した。

今朝まではなかった、でかい箱がリビングの真ん中に鎮座していた。
綺麗にラッピングされた箱に、また風間が何か家具でも買ったのかと呆れるが、それならラッピングまではしないだろうと気付く。
まさか、これが俺へのプレゼントなのか?気にはなったが、とりあえず風間を待とうとソファに座る。

待つ事数分。

風間は現れない。
やはりどこかに出たのかと、スマホを取る。
短く、帰宅している旨を伝える言葉を送ると、室内からLINEの着信音がした。
正確には、例の箱の方から。
スマホを忘れて出たのか?溜め息を吐いて、立ち上がる。

箱の上にでも置いてあるのかと見てみるが、無い。箱の高さは俺の腰よりちょっと高いくらいで、見落とす事はないはずだ。
そこで俺は、一つの可能性に思い至り、そっと箱を押してみる。びくともしない。
中に入っているのは、重量があるものだ。
箱を改めて眺め、上部の蓋になっているものに手をかける。
軽く持ち上げると、簡単に外せる。
そのまま持ち上げ、中を覗き込み、思わず笑いが漏れた。

箱の中身は、風間だ。
サンタの格好で、座り込んだ姿のまま寝ている。
俺を待っている間に寝てしまったのだろう。
可愛い事をする。
手にしていたスマホでカメラを起動し、レンズを向ける。
起こす前に写真を撮っておこう。
シャッター音にも、風間は起きる気配がない。数枚撮ってから、俺は手を伸ばし風間の頭を撫でる。
本当は、こいつだって仕事が忙しくて、疲れているだろう。

「おい、風間、起きろ」

呼びかけ、頬を突っつくと、小さく呻いて目を開けた。
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