番外編

□番外編之五「理由-Sinji-」
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優しい兄貴を好いてたんは俺だけやのうて…
年下の従弟妹たちも、兄貴のことが大好きで…
よく、うちの光月本家に遊びに来とった
みんな兄貴が好きで…兄貴の回りに集まって騒いで、時々怒られて…でも、そんな時もどこか優しくて…
そんな時間が、俺は大好きやった

なのに…
兄貴が死んでから、火が消えてもうたみたいに、家は静かになった
親父も死んだから、本家でも無くなって…
そう…親父も一緒に死んだんや…
けど、それでも
親父は親父で尊敬してとったけど
俺には…仕事であまり家にいなかった親父よりも、兄貴の存在の方が大きかったみたいや
んで、本家やなくなっただけやのうて…
兄貴がいーひんくなったら…従弟妹たちも、家へ来なくなった
ただでさえ兄貴と親父がおらんようなって寂しゅうなった家が…もっと、寂しく感じた

兄貴が死んでもうたことも、人が来ぃひんくなったんも淋しかったけど…
俺が一番「嫌」やったんは、俺を見て…俺の顔を見て、寂しそうな…辛い…悲しい表情(カオ)をする人がおったことや
俺も兄貴も親父似やったみたいで、もちろん俺は兄貴とそっくりやった
だからやろか…
おかんが時々…俺を見て…顔を歪めるんは

それは、おかんだけやないみたいで…
久しぶりに…新しく本家になった叔父さんの家へ挨拶に行った時、従弟妹たちも…似たような反応をした
そうか…
俺は悟った
だから、来ぃひんくなったんやな

でも
そのことで、俺は誰も責められへんかった
そりゃあ、嫌やったけど…
みんなが悪いんやない
「そのこと」は…俺自身が、一番感じていたことやったから
だから…




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