五つの秘宝

□水の巻
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 ほどなくして、水の島の都に着いた。
「大丈夫?アル。」
「休んでいれば、治るはず・・・」
なんとか船を港に着け、アルは地べたに這いつくばりそうになりながら、腰を下ろした。
「最初の航海は一人だったんでしょ?よく平気だったわね。」
ユリは、呆れた声を出しながら、自分の荷物と、アルの荷物もまとめていた。
「前も酔ったけど・・・波も穏やかだったし、ここまでひどくはならなかったんだよ。」
「そう。・・・ちょっと待ってて。すぐに楽にしてあげるから。」
ユリは納得した顔をした後、自分の荷物を探り出した。
「・・・ユリ。なんか、そのセリフ、恐い。」
「そう?・・・・・・あぁ、大丈夫よ。仲間には毒を盛ったりしないわ。」
「だよな。・・・・・・仲間に『は』?」
冗談のつもりで投げかけた言葉に、どこか物騒な答えが返ってきた。
「薬は、毒にもなるって言うでしょう?」
「・・・何してんの?」
「薬の調合。」
ユリの手元を見てみれば、いくつかの薬草を、小さな鉢ですりつぶしていた。
「・・・魔法使いじゃないの?」
「本業はね。・・・副業は、薬師。知らない?副業で毒作って売ってるような魔法使いも、世の中にはいるのよ。」
「マジ?」
「えぇ。・・・犯罪用とは限らず。刑務所での死刑に用いるためのものもあるし、動物の安楽死や、魔物撃退のためや、害虫駆除の目的のものだってあるわ。」
「なるほど。」
「はい。これ飲んで。」
いつの間にか、調合していたという薬ができたようだった。
「これ、何?」
「酔いざまし。」
ユリが差し出したのは、絶妙な香りと、微妙な色を持つ丸薬だった。
「・・・・・・ありがとう。」
(なんて色してんだよ、これ。)
戸惑いつつも、アルはそれを口に入れた。一口で飲みこめる丸薬は、色の割には、味はそれほど衝撃的なものではなかった。
「・・・・・・お・・・」
ほどなくして、先ほどまでの憂鬱な気分が嘘のように、良くなってきた。
「どう?」
「かなり良くなった。・・・すっげぇよく効くのな、この薬。」
「魔法薬だからね。普通のものより効きは早いわよ。」
「さすが。」
「ありがとう。ところで、この島にある秘宝がどんなものかは、わかっているの?」
「あぁ。一応、ウィアに聞いた。」
「・・・ウィアって、風の守護神よね?」
「そうだけど。」
「・・・神様と、仲が良いのね。」
「え?・・・・・・あ、普通に呼び捨てしてた。」
神様に対して、あまりにも無礼だったか。アルは、一人反省した。
「それで?ここには何があるの?」
「あぁ、確か・・・水の首飾り。」
「・・・つまり、ネックレス?」
「そういうこと。・・・じゃあ、気分も良くなったし。地道に聞き込みから始めるか。」
「・・・・・・そうね。」
アルは立ち上がり、二人は島の中に入った。



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