五つの秘宝

□水の巻
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水の巻


 十四話 水の島ウォータレス


 飛翔百五十一年、夏
 この海の南西にある、島のほとんどが、水面下に沈んでいる島。水面下約1メートルの地面にたてた柱を足として作られた家々が建ち並び、また近くに美しい水の湧く場所があることから、【水の島】と呼ばれている。

 その、水の島の沖数キロメートル、顔を青ざめさせ、衰弱した様子で、何かと戦う少年がいた。
「ちくしょー!負けてたまるか!!」
勇ましいセリフに反し、その声の主・・・アルは、船の縁に突っ伏すという、何とも情けない姿でそこにいた。
「大丈夫?」
「・・・・・・なんとか。」
「・・・まさか、船酔いするなんてね。」
そう、アルは、船酔いと戦っていたのだった。
「しょうがないだろ?普通に航海してるだけでも、多少酔うんだ。なのに・・・なんで、あんなに魔物と遭うんだよ!」
「仕方ないわよ。あの海域、魚人の巣だもの。」
「なんだよ、それ!!」
「知らなかったの?」
青ざめた顔で悪態をつくアルとは違い、同行する少女・・・ユリは、涼しい顔をしていた。
「なんでユリは平気なんだよ。」
「体質じゃない?」
「ズルイ・・・っおぇ・・・」
「もう少し頑張って。すぐに、次の島に着くから。」
「サンキュ・・・」
船酔いにより、かなりまいっている様子のアルは、とても、この世界を救おうとしている英雄には見えなかった。




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