番外編

□番外編之六「守人の追憶」
1ページ/10ページ




番外編之六 守人の追憶



魔界暦二三六三年(光明二年) 初夏
夕方、光月家所有の月桂樹の森…通称月の森。
朔弥は今日も、スオウに治癒魔法の教えを乞いに来ていた。
「……ぁ」
ボンッ
「…今日は爆発も小さいな。」
「…はい。」
「…まぁ、明日満月だもんな。」
「はい…。」
スオウの強攻策のおかげもあって、一度成功させることができた治癒魔法。
しかし、それを自在に扱えるようになるには、まだまだ時間がかかるようだった。
「…今日は、ここまでにしとくか?」
「いえ!…まだ、できます。」
気遣うスオウに、朔弥はそれに気付きながらも食い下がる。
「無理すりゃいいってもんじゃねぇだろぅ。」
「でも…」
「焦ってどうにかなる程、これは浅い術じゃねぇよ。」
「……。」
諭され、残念に思いながらも、朔弥は緊張を解いた。
「…何を焦ってるか知らねぃけど。お前は、すごい方だと思うぜぃ?」
「ぇ……?」
「俺がこれを使いこなせるようになったのは…専門学校生の時か、卒業して…二十歳になる前…くらいじゃなかったかぃ?」
「…そう…なんですか…?」
「……そうさなぁ。ちょいと、昔話でもしてみるかぃ?」
「…昔話?」
「あぁ。」
不思議そうな顔で見上げてくる朔弥の頭をそっと撫でてにかっと微笑うと、スオウは手近な倒木に腰掛け、朔弥を隣に促した。
朔弥が戸惑いつつもそれに従ったのを確認すると、スオウは語りだす。
「さぁて、どこから話したもんか。そうさなぁ…




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ