番外編

□番外編之五「理由-Sinji-」
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俺には、五つ上の兄貴がいた
兄貴は、勉強も運動もできて、しかも優しい自慢の兄貴で…
そんな兄貴が、俺は、大好きやった…

けど…運命っちゅうもんは残酷なもんで
俺が十三になるとき…兄貴は死んだ

まだ十八
親父について俺も兄貴も十一の時に入った「塔」て呼ばれる、国の軍事機関からの仕事で…兄貴が憧れてた、大先輩でもある俺たちの親父と一緒に…

二人の葬式の時、俺は「親父も兄貴もおらんのやから」て、しっかりせなあかん気がして…
俺は、大泣きするおかんの横で、涙一つ流さんと、挨拶しとった
喪主いうんはおかんがやっとったし、実質的には叔父さんがいろいろやってくれてたんやけど
「もう、うちに男は俺しかおらん」て思たら、泣いてられんかったんやと思う
任務中の殉職やったこともあってか、仕事関係の人もぎょうさん来てくれはって…
「若い才能が…」とか「惜しい人材を…」とか言うてくれてたみたいやけど
正直、俺の耳には何も入って来ぃひんかった
でも…式の終わりに…兄貴たちの遺体を大地へ還すてなって、兄貴たちが運ばれる時…俺の中で何かがキレて…
俺は、さっきまで泣いてなかったんが嘘みたいに、大粒の涙流して…冷とうなった兄貴の体にすがって泣いた
言いたいことはぎょうさんあったはずなのに…
ただ「あにきぃ…あにきぃ…!!」と繰り返すことしかできんかった




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