本編

□第一話 「水上の町と氷の悪魔」
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世界暦1623年、夏
近海の西南に位置する島。
この島は、町の半分強が水面下にあるため、民家は、一見海の上に浮かんでいるように見
える。
それ故か、この島は、「水の島」と呼ばれている。
その島に、旅人が訪れた。
旅人は若い二人組で、今にも沈みそうな、ボロボロの船に乗っている。
「おい、島が見えたぞ!!さっすがオレ、方向ぴったりじゃん。」
その片方が、船から身を乗り出し、自画自賛する。
「馬鹿、そんなことしてっと危ないだろ。」
船のなかからは、呆れたような、怒ったような、声が聞こえた。
「いちいちうるせぇな、ショウは。落ちなけりゃいいんだろ?落ちなけりゃ…」
ショウと呼ばれた少年は、そんな同行者にため息をつく。
相棒として頼りにはしているのではあるが…。
「別に、落ちたところで心配はしないよ。ただね、カルロ。『船を沈めるなよ』それだけ
だ。」
そんなショウの言葉に、
「わ、冷てぇ奴」
カルロと呼ばれた少年はむくれて体を中に戻す。
「勝手に言ってろ。それより、もう上陸するぞ?荷物まとめろよ。」
「まとめる程ないじゃねぇか。」
「……まぁ、ね。」
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