本編

□九章「カタハライタシ」
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九章 カタハライタシ


 魔界暦二三六三年(光明二年) 朱明の月(初夏)
 時は夕刻、光月家の屋敷。
 その日は珍しいことに、学校から帰るとすでに父がいて…。
エミリを介して久しぶりに巧真の部屋に呼び出された。
「…なんでしょうか?」
「急で悪いが、明朝からの仕事が入った。今日は明日に備え準備だけ済ませて早く休むように。」
「え…明日、ですか?」
「あぁ。」
「し、しかし…明日は…」
「…あぁ。朔の日だ。」
「なのに何故…!」
新月である朔の日と、満月の日は…朔弥と巧夜に仕事はまだ入れない、となっていたはずだ。
「任務番号MS-S472i.A/B…以前、巧夜がアレス様と共に行ってきた任務の続きのようなものだ。そのため、この話は巧夜のもとにきた。」
「それならば…」
「しかし、巧夜は明日は獣化の力を失い、他の能力も落ちる。
朔弥、お前も表向きにはそうしてあるが、実際は違う。
無論、獣化の力を使うのは避けたほうがいい。
だが…危険度が違う。」
「…それは…、危険な仕事になるから、巧夜ではなく私に行けと?」
朔弥は、努めて冷静に…淡々と尋ねた。
父は昔と違う。そう感じつつも、昔からの…長い時を経て植え付けられた考えを拭い去るほどの自信にはならなかった。
「…そう受け取ってもいい…。だが、勘違いはしてくれるな。
……巧夜は、まだ経験が浅い。本人なりに頑張ってくれてはいるが…な。
まだ、満月の日の力のコントロールが甘いところや、新月の日…獣化の力が消えた時にも任務をこなせるだけの基礎能力も無い。
…つまり…だな、……朔弥。お前を…信頼するから、今回の任務を頼むんだ…。」
「…父様…。」
「やってくれるか?」
「…わかりました。」
朔弥の言葉に、巧真は安心したように頷いた。
「…任務だが、明日から…場所は国内。同行者は…アレス様だ。」
「え…」
「頼んだぞ。」
「はぃ…。」


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