本編

□五章「偽りの代償」
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第五章 偽りの代償


魔界暦二三六三年(光明二年) 蒼牙の月(春)

 魔界の住人の学舎…その初等学校を、彼らは卒業する。
「―お父さん、お母さん、先生方…七年間、大変お世話になりました。僕達は、今日この学校を卒業します。…卒業生代表、七年α、光月巧夜。」
卒業生代表の言葉が終わり、その後は祝電、校長の挨拶、校歌斉唱などがあり、式は終了。卒業生退場となった。

 七年αの教室。
「巧夜、お疲れ!なかなか決まってたじゃねぇか。」
巧夜は、クラスメイトの男子に囲まれていた。
「ありがと。…でも、失敗しなくてホントによかった。」
実際、前に立っている時は冷や汗ものだった。
「ハハッ。失敗したら、大恥だったぜ?ま、クラスのやつらは笑って迎えてやるだろうけど。」
回りで笑いが起こる。
「いいんだか、悪いんだか。…にしても、なんで僕なんかが選ばれたんだろ?」正直、そのことがずっと疑問だった。
別に、学生会役員だったわけでもなく、学級委員をやったことがあるわけでも、何かで賞をとったわけでもない。
なのに、なぜ…?
「バーカ!何言ってんだよ、学校一の天才が。」
「天才?そんなんじゃないよ。っていうか、今『バカ』って言ったばかりじゃないか。」
「あ〜、これは言葉のあやだって。」
「巧夜は、いっつも百点だもんなぁ〜。」
そうは言っても、初等学校レベルなら、たかが知れてると思うが…。
「ま、巧夜。中等学校でも天才君で、オレらを助けてくれや(笑)。」
「あ…そのことなんだけど…言ってなかったかな?」
「お前知らねぇの?巧夜、こないだ入学試験受け行くって、休んでたじゃねぇか。」
「マジ?…てか、いつだよ。休んでたって、いつもの『仕事』かな?って思ったし。」
「あ〜。まぁ、そうだよなぁ…。」
回りを見てみても、知らなかった人は多かったようだ。
「で、どこ行くんだ?」
「うん。それが…」


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