本編

□四章「イソギ」
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四章 イソギ

魔界暦二三六二年(光明一年) 玄冥の月(晩冬)
 忍びの者を統括する機関、王城の横の塔。
一階の事務所に、任務を終えて帰ってきた一人の少年がいた。
「任務から帰還の報告を」
「任務コードを教えてください。」
「FK-L253i.A/S」
「…エルフの動向の諜報任務ですね。…アレス様…本人の認証パスを」
「×××××」
「…確かに、ご本人のようですね。Sクラスの任務、お疲れさまでした。」
 「……ふぅ…。」
報告を終えたアレスは、受付を離れたところで小さなため息を吐く。
「すみません。」
受付のカウンターから、聞き覚えの有る声が聞こえる。
「これ、報告書です。」
「はい、光月さんとこの巧夜くんね。また、お父さんのお使い?」
「はい…まぁ。」
「まだ十でしょ?感心ね〜。」
「はい、ありがとうございます。」
「私も今、中等学校生の息子がいるんだけどね、もうそれがまた聞き分けの無い子でねぇ…」
「すみません。まだやることがありますので…」
「あらそう、残念ねぇ。それじゃあ、がんばってね。カッコいいお父さまによろしく。」
「…はい。」
その声の主は、報告書を手渡すとその場を離れた。
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