本編

□第一話 「水上の町と氷の悪魔」
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「ああ。」
ふと空を見上げると、雲の色が怪しくなっていた。
「こりゃ、一雨来るな。」
ショウの呟きに、カルロも賛同する。
「だな。…嵐になるかも?降りだす前に島に着いてよかったな。」
「あぁ。ほんとによかった。」
もしもこのボロ舟で航海をしていたら…考えるのも恐ろしい。
「さっさと今夜の宿探さねえとな。」
「あぁ。」
ショウは、空の様子だけでなく、ともに感じる妙な気配に懸念を抱きつつ、港を後にし
た。
「なんだと!?部屋がない?」
島の宿に着くなり、カルロは怒鳴り声をあげた。
「落ち着けって。」
「これが落ち着いてられっか!!」
カルロが怒る理由は解らないでもない。
部屋にはまだ空きがあるはずなのに、ないと言われたのだ。
「なめてんのか、じじい!」
「身分証を出さない人はお泊めできません。」
「はぁ?身分証だぁ?!」
「はい。あやしい人をお泊めすることはできたせん。」
彼の言うことは、もっともと言えばもっともであるが…
「すみません。私たちは旅の者でして…この国の身分証等は、残念ながら持っていないん
ですよ。」
ショウが、戸惑いつつも、丁寧に説明した。
だが、しかし。
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