misstake

□貧乳はステータス
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「……なんなん、この距離」


びくり、思わず肩が揺れる。
私と財前くんの間には人が3人余裕で座れるくらいの距離が空いていた。

財前くんにお昼を誘われ、あんな顔をさせた罪悪感もあり、仕方なく一緒に屋上に来ていた。
そこで、冒頭のセリフ。


「べつに、普通ではないでしょうか」


できるだけいつも通りに答える。
すると、なんで敬語、というツッコミと共にふっと笑う財前くん。
どうやらいつも通りにはできなかったようで、少し恥ずかしくなって、それ以上は笑って誤魔化すことにした。

にしても、警戒するなってほうが無理だと思う。
それは財前くんも分かっているようで、必要以上に距離を縮めようとはしなかった。
意地悪なんだか、優しいんだか。



「財前くん、お昼もしかしてそれだけ?」


財前くんのお昼はパンひとつ。しかも、手の平サイズ。


「ああ、少食なんすよね。省エネなんで」


「いやいや育ち盛りの男子学生がたったそれだけって!これ、食べて」


そう言って彼にお弁当のおかずをいくつかフタに乗せて差し出す。ついでに食べれるようにピックを刺してあげる。
財前くんは驚いてから、しばらく要らないとかなんだとか言ってたけど、ここまできたら私も意地があるので無理やり押し付けることにした。


「…うま」


「ほんと?良かった!」


無理やり押し付けはしたけど、自分が作ってる手前、味がどうかは気になるところ。
なかなかの好評価のようでやっぱり嬉しくなる。


「実優先輩、料理うまいんすね。意外やわ」


「意外は余計です!まったく素直に褒めてよ」


「ははっ、じゃあ、これお礼」


これ、と私に渡してきたのは牛乳。
たぶんお昼ごはんと一緒に飲もうと買ったやつ。


「え、でも、」


「実優先輩って顔かわええけど、牛乳もっと取ったほうがええかなって」


「それってどういう…」


よく分からなくて訊けば、財前くんは楽しそうに笑った。これは何か企んでるような…?


「主に胸の脂肪が足りてへんとちゃいますかっちゅー話っすわ」


牛乳はいつのまにか私の手に握らされていて、財前くんは片手を上げヒラヒラ手を振るとそのまま屋上を去って行った。私はバタンと閉められた扉を呆然と見つめる。

胸の脂肪が足りない?
つまり、それは私が貧乳だと言いたいのか…?





貧乳はステータス
(いや、成長期だし!ていうか、今でも標準だから!)

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