頂き物
□大好きな、キミと
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ピンポーン、とインターホンが響く。
約束の時間ぴったりに来た恋人に頬を桜色に染め、栗色の髪を揺らしながら階段を下り、扉を開ける。
「手塚っ」
*大好きな、キミと*
ぎゅうっ、
扉が開いたかと思うと、いきなり抱きつかれた。
「遅いよ、手塚」
「…時間はちょうどいいと思ったんだが」
お邪魔します。
手塚はそう言うと、不二を軽々と抱き上げて階段を上った。
不二はこうして手塚に抱き上げられるのが好きだった。
おかげさまで手塚の腕力は強くなったのだった。
感謝するところである。
「だって、手塚待ち合わせの時は10分前行動じゃないか」
「人の家の場合は早くても遅くても良くないだろう。…だからちょうどに来たんだが」
「じゃあ、今度から10分前行動だね」
不二はにっこりと笑って言う。
両手が塞がれた状態だと、ドアを開けることができないので部屋の前に着くと手塚に降ろされた。
しかし、不二は降ろされたことが気に食わないのか、むすっとする。
「そんな顔をするな」
「手塚が悪いんだよー」
ツンと顔を背けて不二は部屋のドアを開け、中に入る。
手塚もつづくようにして不二の部屋に入っていく。
そして、優しく不二を抱きしめた。
「…いじけるな、不二」
「別に、いじけてないよ」
いや、いじけてるだろう。と手塚は思ったが、不二の機嫌を損ねると面倒なので口に出すのはやめることにした。
「ねぇ、手塚…」
不二はふいに手塚の名を呼ぶ。
そして、手塚の腕の中で半転し、手塚と目を合わせる。
「あと何回、君に抱きしめてもらえるんだろうか…」
「不二?」
「あと何回、君に触れられる…?」
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