頂き物

□桜雨
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散りゆく定めだと解ってはいても。

散りゆく光景が綺麗だと思えても。

それは少しだけ、悲しさと寂しさを伴うもの。






『桜雨』






誰もいない夜の学校。

卒業してからここに訪れるのは久しぶりだった。
避けていた、と言ったほうが正しいかもしれない。

ここは、あまりにも思い出が詰まった場所だから…。





花見に行こうと誘ったのがついこの前。
電話の向こうで手塚が苦笑していたのを覚えている。
半分冗談、半分本気。
なんとなく会話の流れで出た言葉だった。
それなのに…。

『散る前には一度帰る』

そう言った手塚は、本当に桜が散る前に日本に帰って来た。

有言実行とはまさにこの事を言うのだと、空港で手塚の顔を見て改めて思った。






さすがに名の知れた手塚をこの時期人の多い花見スポットに連れて行くのは気が引けたので…と言うより、ばれた時の事を考えるとオソロシイので、ひと気の少ない夜、それも母校にお忍びで行くことにした。

校門を軽々と乗り越えた手塚は、

「こんなに低かったか?」

と、僕が門を超える手助けをしながら言った。

「低いんじゃなくて、君の身長が伸びただけだろ」

相変わらず身長が伸び悩んでる僕に対する嫌味か?と思わずにいられない。
手塚との身長差が会うたびに広がっているように思うのは、気のせいではないはずだ。
その身長、少しでいいから分けてほしいよ。


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