頂き物

□Silver
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東京駅から長野新幹線で約70分。
軽井沢駅到着。
軽井沢駅から徒歩で約30分。
溶け残った雪がかすかに残る木々の中。その少し奥。白い外壁が特徴の別荘が僕たちの前に現れた。

「なーんか意外」

別荘を目の前にして英二が言った。

「何が?」

英二の言葉に反応した大石が聞き返す。

「んー?何ていうか、もっとこう…どーんって感じで、すっげー、みたいな…」
「英二…」
「菊丸。もっと分かりやすい表現をしないと、大石が困ってるよ」

二人の会話を後ろから眺めていた乾が、眼鏡のブリッジを人差し指で押し上げながらフォローを入れる。

「乾もそう思わねぇ?跡部家の別荘にしてはこじんまりしすぎって言うか。普通?」

振り返りながら英二が言った。

「まぁまぁ。貸してもらうんだか贅沢は言えないよ」

今度は乾の後ろにいたタカさんがフォローに入る。

「そうだぞ英二。贅沢はダメだ」
「ま、いっか。不二ー。鍵、鍵」

英二は大石が横で話すのを軽くスルーして河村の少し後ろにいた不二に声をかけた。

「はいはい」

不二はいつのも微笑を浮かべ英二の側に駆け寄ると、預かっていた鍵を取り出した。

「なぁなぁ不二」
「何?」
「あいつ、来たりしないよな」
「あいつって?」
「だーかーらー。この別荘の持ち主」
「跡部のおじい様?来ないと思うよ」
「だーーーーっ。違うよ。跡部だよ、跡部景吾!」
「ああ、そっち。来ないでしょ。と言うか来れないでしょ。跡部は今イギリスだし」
「ドイツからはるばるやってきた奴がいるのに?説得力ないって」

英二が一番後ろにいる手塚を振り返って言った。

「へぇ〜。英二ちゃんとヨーロッパの地理知ってるんだ」
「不二、俺の事バカにしてる?」
「ごめんごめん。鍵開いたよ、寒いから早くみんな中に入ろう」


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