Novel

□夕焼け
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「不二?」


珍しく部活がない今日。
一緒に帰る約束をしていたので、手塚は授業が終わってからすぐに待ち合わせ場所である図書館へと向かった。
だが、授業が終了してから1時間経っても、不二は来る気配を見せない。
不審に思った彼は、急いで不二の教室へと足を向けた。
辿り着いたそこは、放課後独特の雰囲気で包まれていた。


誰も居ない静寂と、夕焼けの光。


温かい筈なのにどこか冷たさを持つその光を浴びながら、一番隅の机で不二は眠っていた。
珍しい事もあるものだ。と、手塚は静かに傍に寄った。
自分の腕を枕代わりに。上半身を突っ伏して眠っている。夕日が差し込んでいるのに目を覚まさないという事は、それほど深く眠っているという事だ。
最近は大会やらテストやらで忙しく、疲れ果てていたのだろう。そんな時に出来た休み。気が緩んでついつい寝てしまったのだろう。
見れば、先に帰る。と菊丸がメモを残していた。肩からかけられているジャージも彼の物だろう。
少し肩から落ちたそれを優しくかけなおして、前の席に座る。
窓に背を向けて、じっと不二の寝顔を覗き込んで見た。


(やはり・・・・・・・・・)


綺麗な顔立ちをしている。と手塚は再認識した。
男にしては長い睫毛が、顔に影を落としている。いつも外で同じように練習しているのにも関わらず、彼は相変わらず白かった。
色素の薄い髪が、夕日に照らされて輝いている。一房手にとって、じっと見てみた。




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