「おい.イチゴ牛乳〜」

いつもの間の抜けた声で.ソファに寝そべりながら呼びかけられた

「はいはい」

最初は.コキ使うなとイラついてたけど
最近は慣れてきた

…というか諦めた


「おい.アレどこいった〜?」

相変わらずソファに寝そべったまま問われる

「耳かきなら机の一番右の引き出し」

『アレ』とか『ソレ』だけで.銀ちゃんが
欲しているものがわかる

かれこれ4年…あれ?5年だっけ
とにかく私と銀ちゃんは長い付き合いなのだ


まだ.恋人の関係だというのに
この長年連れ添った夫婦みたいな安定感…

「はぁ〜」

安定してるのは.とて喜ばしいことなんだろうけど
なんかこう…ね?

フレッシュさ!!
そういうのが欲しいのよ

そんな思いからか.布団を干しながら長い長い溜息が零れた








「おい.そろそろ結婚すっか」




「はいはい.結k…はぁ?!」


え?
え?!
何.さっきの「イチゴ牛乳」と同じトーンで言ってくれちゃってんの?

危うく聞き流すところだったじゃない!!


「なぁ.俺ら付き合ってもう4年…あれ?5年だっけ?」

あ.さっき私が考えてたことと一緒だ

「とにかく長いじゃん?だから.そろそろさぁ…」

ソファから私の居る窓際まで欠伸をしながら近づいてきて

「苗字.坂田にしてみない?」

なんてニヤリと笑って私の左手をそっと掴んで


「…あ」


ピンクの折り紙で綺麗に作られた指輪を薬指に嵌めた


「今はさ.こんなんだけどいつか本物の給料3ヶ月分…やるから我慢してくれや」

いつになく穏やかな声に久しぶりに高鳴った胸

「返事…は?」

急に不安そうに俯く銀さんの横をすり抜けて

「お.お〜い?何してんの?」

テーブルの上に散らばった折り紙で返事を折った

「婚約指輪はやっぱりペアじゃないとね」

銀さんの左薬指に嵌めながら.そう言った


「…?!」

目を見開いて.私を見る銀さんに
精一杯の笑顔を向けて

「よろしくお願いします」

言いながら.抱きついて銀さんを見上げると
だんだんと近づく銀さんの顔

「…ん」

まだ.高い位置にある太陽の前で誓いのキスをした











「あれ〜?銀ちゃん何アルか?その指輪」

夜ご飯の支度をしていたら聞こえてきた神楽ちゃんの声

「ホントだ.しかもニヤついちゃってるし…」

続けて新八くんの声

「ゴホン.お〜い!」

わざとらしい咳払いのあと.私を呼ぶ銀さん

パタパタと居間に入ると.肩を抱かれて

「ジャーン!」

銀さんは.よく芸能人がテレビでやっているように指を揃えて折り紙の指輪を2人に見せびらかした

「お前も.ほら!」

小声で.強要してきて
おずおずと銀さんの真似をする私

「俺たち.夫婦になりまーす!」

いつものニヤついた笑顔じゃなくてキラキラした笑顔で言い放たれて

まだ実感が全然湧かなくて
そっか.夫婦になるのか…
なんて.どこか他人事のようにぼんやり考えた


「えー?!お.おめでとうございます!!!!」

「銀ちゃんに泣かされたら.慰謝料たんまりもらって私のところに来るヨロシ」

2人なりの祝福の言葉に.心が温かくなった








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6月ということで.ジューンブライドを意識してみました!!



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