happiness
□青8
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昨日のことなんてなかったかのように、それからのことはあまりよく覚えていなかった。
「――…」
嘘。自分でも信じられないくらい事細かく覚えている。
嫌だ嫌だいやだ。
そう思えば思うほど、頭から追い払おうと躍起になって余計に鮮明な場面を思い起こさせる。
「お兄さんの傑くんはたった今……脳死状態に陥りました」
「お気の毒ですが……――亡くなられたということです」
逃げちゃ駄目だ、頭の中で分かっても胸の辺りは疼いて心がごねる。
どうして人は生きて動くのか。どうして人は笑うのか。どうして人は言葉を喋るのか。…――どうしてあの人はいないのか。
胸が痛い。今は、世の中生きていることが当たり前でそれに対して何の不思議も抱かないようなこと総てが不条理に思える。
ねえ傑。あたし、このままずっと何十年も時と一緒に流れて平凡に死んでいくのかな。…このままずっと、傑はいないのに生きていてもいいのかな。
DESPAIR
ねえ、あたしどうすればいいのかもう分かんない。
09.05.24
絶望、なんて言葉じゃ