happiness

□青7
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お願い、お願いだから。そう祈ることしかできない。胸が苦しくて仕方がない。もしも大切な2人が一度に傍からいなくなったら。考えるだけで目の前が真っ暗になる、想像さえもつかないはずなのに。


いつもなら文句のひとつでも言いたくなる嫌に固い椅子も忙しなく走り回る白衣の人達も、もうどうでもいい、気になんてならない、してられない。もうほんと他はどうなってもいいから、お願いだから、どうか。






サッとドアが開いた。中から出てきた医者の、強張った顔に言い表せない思いが溢れる。2人のお父さんとお母さんは駆け寄ったけれども、どうもあたしは動けなかった。

「せ…先生」
「どうなんですか?2人は…」
「大丈夫ですよね、助かるんですよね!!」

医者の口が開く。

「落ち着いて聞いてください。お父さんお母さん」
「え」

気持ちだけが先走る2人は戸惑いの声をあげる。

「手を尽くしましたがまことに残念ながら、お兄さんの傑くんはたった今……脳死状態に陥りました」
「の…脳死?」
「脳死って…」
「……」

少し、沈黙が見えた。あたしは耳を塞ぎたい衝動に駆られる。小さく口を開けた医者は俯いた。

「お気の毒ですが…」





…――亡くなられたということです

風がよぎる。耳に入る言葉がやけにスローモーで、信じたくない拒否の心から、あたしは息さえできずにいた。








願いが散るのはいつものこと、だけど今回こそはと架けた願いさえ虚しくも散っていく。神様なんて信じたことは一度だってなかった。それを信じたあたしが馬鹿だったなんて言いたくないけど、もう誰のせいだとかなんだとか、考えてる余裕は一切あたしには無くて。
一瞬が千や億、それ以上の時に思え、思考停止、ただ虚しく泣き叫ぶことしかできなかった。




UNBELIEVER


こんなの馬鹿げてるよ。そんな言葉も虚しく散りゆき、




09.03.31
信じない、信じない、信じたくない



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