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□I wish...
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「メリークリスマス、アレンくん。それから、誕生日おめでとう。」
「お〜アレン、メリークリスマス&ハッピーバースデー」
食堂に行くと、皆がクリスマスを祝う言葉と供にささやかな誕生日プレゼントをくれた。
「ありがとうございます。後で美味しくいただきますね。」
寄生型の僕はよく食べるからとそのほとんどが食べ物だった。
けれど、この中に一番欲しい人からのプレゼントはない。
まだ食堂に来ていないのかと辺りを見回すと、案の定彼の姿はなかった。
一通り食事を済ませて、自分の部屋に戻る前に彼の部屋を訪ねる。
「メリークリスマス、神田」
勢いよくドアを開ければ、いつも通りの不機嫌そうな彼がいた。
「何の用だモヤシ。」
「クリスマスプレゼント、渡そうと思って。」
そう言って笑いかければ、彼はいっそう不機嫌な顔になる。
僕は構わず彼の側に座り、一輪の薔薇の花を差し出した。
彼は何も言わずに受け取り、しばらく花を見つめてから、思い出したように綺麗にラッピングされた箱を取り出した。
「ほらよ」
少し頬を赤らめて視線を逸らす彼が堪らなく愛おしい。
「ありがとうございます。でも、どうして?」
キリスト教徒でもないのに、と問えば、予想外の答えが返ってきた。
「誕生日、だろ?」
「正確にはマナが僕を拾ってくれた日、ですけどね」
照れ隠しに言った厭味初めて彼の機嫌を損ねたようで、彼は顔を背ける。
「じゃあ、僕戻りますね。」
彼は返事をしなかったけど、僕は構わず部屋を出た。
扉を閉める前にそっと呟く。
「愛してます、神田。」
聞こえない様に言ったはずなのに、その瞬間、彼がこちらを向いた気がした。



→アトガキ
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