過去拍手
□甘い半分こ
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お登勢さんの所へお家賃を払いに行ったら
「これ、貰い物でちょっと食べちまったが高級で美味いから、持ってきな」
と、とても綺麗な箱に入った行列の出来る洋菓子屋のシュークリームを頂いた。嬉しいです!うん、万年欠食児みたいなのが居るんで助かります!
で、でもそのシュークリーム・・・箱の中には3個しか無かった。
神楽ちゃんには食べさせてあげたいし?(この間レディース4でやってたこの店の特集を見て、ヨダレが1階に水漏れするほど流れていたし?)
新八君にも食べさせてあげたい。(いつも小間使いのように、パシらされてるし?もう山崎さんといい勝負?)
・・・銀時は、狂ったように食べたがるだろうし?(まぁ、あんなだけど、私間借りしてるしな)
実は私、この間バイト先の真選組で1つ頂いて、その美味しさに驚いた。だからこそ、万事屋の皆に食べさせてあげたいし?
・・・・・・・・・・・・
「これっ!この間レディース4でやってたアル!ヤッター!」
「いいんですか?」
神楽ちゃんはさっそく口へ放り込んだ・・・いやだからそのシュークリーム1個高いんだって!味わって食べないさいよ!?
そして新八君は、数が足りない事を気にしてまだ手もつけていない。いやそんなだから、いつも山崎さんと張り合えるぐらい地味なんだって!
そして銀時は・・・箱の中を凝視したまま何も言わない。
「じゃ、私お登勢さん所の洗い物のお手伝い行ってきます」
そう残して、扉を開けた。
本当は、今日はお登勢さんにバイト頼まれていないんだけど、私がここに居ると皆食べにくいだろうな?と思って、夜空を見上げながら万事屋の階段に座り込む。
空高く見える星は・・・あの輝きの中に辰馬の船はいるのだろうか?ほんの数ヶ月前まで、この夜空の一部分だったのにな。辰馬め、今度会ったらあの頭、全部ストレートパーマかけてやる!
少し、さびしくなって。いつか万事屋を離れ再び辰馬の船に戻る私は、どこか遠慮があって・・・。
その時
「おっ!流れ星!」
突然の銀時の声に、再び夜空を見上げた私の口に、無遠慮に突っ込まれた何か。
「あいつら食っちまったから、オレの半分個な?」
口の中に広がる甘さ。これはさっきのシュークリーム。
銀時の口元を見上げれば、私と同じ形。半分になったシュークリームが頬張られている。
・・・もう、こんなに優しくされちゃったら『社会見学』が終わるとき。泣いちゃうじゃん?
昔、辰馬に連れられて、まだ戦いを続けている皆の元を去ったときみたいに・・・。
でも、今は万事屋でうんと・・・甘えてみるのもいいかもしれない?
「銀時・・・ありがとう」
「何泣いてんだよ、バーカ」
甘いシュークリームのような銀時の、甘くて優しい『バカ』発言にちょっと笑ってしまった。
「もうちょっと社会見学よろしくね?」
「・・・好きなだけ居ればいいだろー」
「うん」
と答えた私の声は、夜空に吸い込まれていった。
おしまい
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