刃に咲く紅

□第二章
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結局―…

どれだけ歩いても森から抜け出る気配は一向になく、最悪のシナリオ通りにあたしは山中をさ迷いながら夜を迎えることになったのだった。






夜の森は闇の中に更に墨を流し込んだかのように濃く濡れた黒色をしている。



―自分の指先すら見失うほどの闇…





日があったときには鳥の声が聞こえていたりもしたけれど、今は耳をすましても鳥の声はおろか、虫の声ひとつ聞こえない。


ただ、真っ暗な闇へと風が吸い込まれていくような音と、それに弄ばれてざわめく木の葉の音だけがあたりに渦巻いている。



森の中を吹き抜けていく風は昼間より冷たくなってはいたけれど、湿度を含んでいるせいなのか、重く、体中にまとわりついては不快感だけを残して過ぎ去っていく。






幸運なことに、制服のポケットの中には気を失う前のまま、携帯電話と100円ライターが入っていた。



ライターは目の前でタバコを吸われるのが嫌で、彼氏から奪い取ったもの。



ケータイが入っていたのに気づいたときには、助かった!と思ったのに…


…開いてみればお約束どおり画面の左上で“圏外”の二文字があざ笑うかのように光っていた。






けど今はライターがあっただけで儲けものだ。





果てしなく広がっているかのような錯覚さえおこる黒い世界に、小さいけれど灯りを点す。


心細い光だけれど、黒い世界の中にあたしの世界が出現する。





視界も足場も悪条件の中、やたらと歩き回るのは危険だと判断し、とりあえず落ち着ける場所を探すことにした。





そういえば気がついたときから歩きっぱなしの身体はもうあちこち悲鳴をあげていた。



必死になって歩いていたから気づかなかったんだ…





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