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□m,e,l,t
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「うわ、すっげぇ!真っ白じゃん…」
起き抜けで今朝はやけに眩しいと感じたのは、夜中降り続き、一面に積もった雪に反射する朝陽のせいだった。
全てが白に飲み込まれた街を見て、一気に目が覚める。
窓を全開にしてしばらく見入っていたが、居てもたってもいられなくなり、まだ傍らで眠っている久保ちゃんを早速起こしにかかる。
「久保ちゃんっ
…なぁ、久保ちゃん!
見てみろよ、雪だぜ!」
なのに久保ちゃんてば、
「う、ん………」
とか言って、せっかく剥がした毛布をまた被ろうとするし。
「雪、すげぇ積もってる!
外がぜんぶ真っ白」
遠慮無く揺さぶってからまた外を眺めていると、ようやくむっくりと上半身を起こした久保ちゃんが、後ろから肩に顎を乗せてきた。
「うーん、寒…」
そう言って、まだ半分寝てますよって感じで、俺の背中にぴったりとくっついて体重を預けてくる。
「見ろよ、積もったのとか久し振りだよな?
なんかテンションあがってきた…!」
滅多に見れない光景に、うずうずとした気持ちを隠しきれないでいると、久保ちゃんは微笑みながら俺の耳元で「クスッ」と笑って、
「ときとー…かわいい…」
「まぁーだ寝ぼけてんのか?」
この気持ちを一緒に楽しみたくて、俺は後ろから抱きついてきてる久保ちゃんの手を取ると、そのまま結露した窓硝子に押し付けた。
「…冷たいね」
キュッと音が鳴って、硝子についた手形に外の世界が切り取られる。
それは、いつもの街並みとまるで違っていて、白銀に塗りつぶされた街は物音ひとつ立てずに、静かに朝の光を湛えていた。
ただ、それだけなのに。
何故だか世界に2人きりになったような気がして、俺は冷たくなった久保ちゃんの手のひらをぎゅっと握った。
「久保ちゃん…」
「…うん」
久保ちゃんは、握った手のひらから俺の気持ちが伝わったみたいに、優しいキスをくれる。
冷たく乾いた唇を擦り合わせると、ふっと吐息が漏れる。
たまらなくなって、絡めた指に力を込めると、それに応えて久保ちゃんの熱い舌が、形をなぞるように唇を舐める。
だんだん荒くなる呼吸に合わせて、何度も夢中で繰り返す。
こういう時の久保ちゃんは、どこか獣じみていて、それを感じたとたん、腹の底から何かを抉られるみたいに、煽られてしまう。
「くぼちゃ…、くすぐったい」
「それだけ?」
「あ…すげぇ…、熱い」
久保ちゃんは、濡れて柔らかくなった俺の唇を甘噛みしながら、反応を窺うみたいに、首を傾いでのぞき込んでくる。
「あんまっ、見んなよ…」
「どうして?」
久保ちゃんの熱を背中に直に感じて、冷静でいられるわけがない。
だが、乱れていく自分をさらけ出すのは、何度目だって慣れるものじゃない。
早くなる呼吸を隠したくて、必死に息を整えようとする俺の反応を見通したらしく、久保ちゃんは、俺が上から握っていた手で今度は俺の手を取って、俺の胸元へ忍ばせた。
信じられないことに、そのまま、俺の手を使って胸を愛撫し始めた。
「やっ…嘘、くぼちゃ、ん…っ!」
「ほら、誰かさんのせいで俺の手、冷たいし?
そのまま触ったら可哀想かな、って」
「ふ…っ、だから…って、こんな、の…、あっ」
まるで、自分でしているような錯覚に陥って、一気に頭に血が上るのを感じた。
「ふーん、自分の手でいじって、興奮しちゃってるんだ…?」
「あ、違っ、…れは、俺の手、っ…だけど、くぼちゃんの手、だし…」
恥ずかしさと熱さで、一気に思考が飛びそうになる。
まさか自分で力を入れられるはずもなく、久保ちゃんが重ねる手に加減を預けてされるがままで、それがさらにもどかしく感じる。
「…ねぇ、ほら、わかる?
すっごい、硬くなってる」
耳元に押し付けられた唇から、重低音が響く。
ずくん、と腰に疼いて、堪えきれずに喉を仰け反った。
「あっ、あ…もう、やだ…」
恥ずかしくて、嫌なはずなのに、感じすぎて、涙が勝手に出てくる。
「はっ、あ…、くっ…ねぇ、くぼちゃん」
「時任…」
もう限界、と言わんばかりの俺を見て、久保ちゃんはやっと胸元の手を止め、優しくベッドに横たえてくれる。
微笑む久保ちゃんに見下ろされて、思わず腕で顔を覆ってしまった。
こんなぐしゃぐしゃな顔、見られたくない。
「時任…隠さないで…」
「はあっ、…はっ、…ちょっと、待っ…」
「ねぇ…」
「あっ…!」