-長編

□旅行先は戦国時代-19
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「うぅ…寒っ」

震える身体を抱き締める。

やはり冬はジャージだけでは耐えきれず、何か無いかと私物の鞄や手提げ袋を荒らす。


「ん?あ、これ…」


すると手提げ袋から少し懐かしいものが出てきた。

畳まれていたそれを広げれば刺繍の『大一大万大吉』と言う文字が目に飛び込む。

次にうっすら赤く染まる白い生地。

おぞましい記憶が脳裏を駆けて行くもそれさえ懐かしく思える。


「あー、そっか。あの日からもう1年経ってるっけか…」


私、この時代に来て随分経っているんだと改めて気付いた。

空を見上げれば灰色の空から白い小さな結晶が降り落ちてきた。









-約束と奇跡の起こし方









「うー…ん。今さらだけど一応この陣羽織は返さないとだし…でも三成今いないからなぁ」


寒いため、部屋の隅で布団を被りながら1人呟く。

三成は一度佐和山に戻るとか、他に豊臣家に忠誠の熱い大名のもとに訪問するとか言って左近さんを引き連れ颯爽と出ていってしまった。そして生憎、私は留守番中と言うわけだ。

と、今の話だと少し間違いがある。


実際颯爽と出ていったところは目撃していないし、武蔵からの伝言であるために後を追えなかったと言うことだ。

大人しく留守番など私が引き受けるはずもないことを承知の上で朝早くから出ていきやがったな。

しかも遠征なためなのか、相当時間がかかっている。

もう2ヶ月近くも帰ってこない。


「何かあったのかなぁ…」


ギュッと陣羽織を抱き締めていた私は閃いた!と言うように手を叩く。


「よし!神社に行こう!」


何を思ってかグッと拳を握り、突然そう叫んだ私はまた喧嘩している武蔵と小次郎さんに留守を頼み、早速出掛ける準備を始めた。













 
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