TFA夢

□そうさ君に逃げ場はない
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風が空を切る。巨大な物体が動き回るせいで起こる自然でない風が。
耳元を騒がせるその音を無視した私は思い切り跳躍して不安定な足場を幾度となく飛び上がっていく。舞台は巨大ロボットの身体の上。しかし戦っている相手は今私の足場となっているロボットだ、振り落とされれば命はないだろう。
突然地球にやってきてどっかんどっかんとあちら此方破壊して回るこの人間にとっての「悪者」は、そのセオリー通りにまあ良く喋る生き物だった。けれど戦闘中のお喋りというのはいつの時代も命取りというもので。

巨大ロボットは自らの体の上をちょろちょろと駆け回る私に激昂してバカ野郎!とか登るな有機生命体!などと罵り文句を口にしていたけれど・・・それらの言葉を一切合財無視した私はその口の悪いロボットの頭を両腕で抱きしめるように掴むと、もうソイツが口を利けないようにする為に首を強く捻り上げて頭と胴体をさようならさせてやる事に成功したのであった。










「成功した・・・筈なのにアンタ凄いねえ。首だけになってもまだ生きてるとか気味悪すぎ!何なのねえシシガミ様なの?それとも首だけになっても噛み付いてくるの?山犬なの?どっちなのかはっきりしなさいよこのポンコツ!」

「誰がポンコツだ下等生物が!俺様はディセプティコンの頂点に立つ男、輝くイケメンスタースクリーム様だ覚えておけ!」

「その下等生物にギロチンかまされたのは何処のどいつだよ輝くイケメンスタースクリーム様(笑)首だけになっちゃいましたよ男前が台無しですねイケメンスタースクリーム様(笑)」

「ムッガアアァァこの人間ムカツクウウウウゥ!!!」



最早どでかい産業廃棄物と化してしまった、うつ伏せで倒れる本体の横で器用にも首だけで元気に跳びはねるスタースクリームとやらは歯軋りをしながら赤い目を光らせて私をにらみつけてくる。しかし当然ながら首だけしか動かないのだから文字通り手も足も出せない状態なので全く怖くないというか・・・むしろ巨大サッカーボールとして首蹴り上げて遊んであげたくなっちゃう不思議な感覚が私の中を走り抜けていた。

そもそも何だかコイツ、全体からなんとな〜く不憫オーラが出ていてちょっと・・・私の嗜虐心をいい感じにくすぐってくれちゃう感じなのだ。予言するが絶対コイツ友達いない。絶対今までイケメンだと他人に褒められたことない。ああ・・・やだわそう考えるとちょっと可愛いじゃないのこの生き物・・・ふふ・・・ふふふふふふふふ・・・・



「な・・・なんだよ不気味な笑顔だな・・・ていうかっ!何が可笑しい!?」

「首だけスタースクリーム様(笑)が面白いんですけど〜マジウケるっていうか〜(笑)」

「クッソオオォ身体さえ元に戻ればお前なんか生かしておかないんだからなっ!?覚えておけよ人間!?」

「そう言われて私が素直にアンタの身体返すとでも思ってんの?まあ・・・私も鬼じゃないのでそうだねえ、両手足のパーツ全部もぎ取った後に首と胴体を再会させてあげてもいいんだよ☆」

「立派に鬼じゃねえかよこれだから有機生命体のいる星は嫌なんだよ!!そもそも俺が見てきた人間ってのはこう、もっと非力で弱い生き物だったぞ?なのにお前は何でそんなにバ怪力なんだよ!しかも性格極悪!」

「性格は兎も角として私を一般の人間と一緒にしてもらっちゃあ困るンだな〜これがー」

「一般じゃないのはもう判ってるっつうの!あークソ俺より先にオートボットどもを潰してくれりゃあ良かったのによ・・・」

「オートボット達は人類の味方じゃない。最初は吃驚したけどでも地球を一緒に守ってくれているんだったら彼らと私の利害は一致しているんだよ」

「随分規模のでけー話じゃねーかよ。まるでお前がこの星を守ってるような言い草じゃねえか」

「その通り!!!知らざぁ言って聞かせやしょう!私の正体は全世界に分布する秘密組織の一員!地球防衛軍なのだーーーっ!!!」

・・・・・・・・・は?



悪者にしてはコロコロとよく表情の変わるスタースクリームだが、今度は目を半分細めて訝しげな表情を浮かべてみせる。その様子がなんとも人間臭くて滑稽だ。
しかし彼のような地球外生命体が地球防衛軍の存在を知らないのはまあ当然の事なので、彼の生首の前で仁王立ちをして如何に地球防衛軍という存在が尊くまた強いものなのかという説明を私は懇切丁寧にしてやったのである。組織の存在は一般人には秘密なのだけど、コイツは一般人とかいう生ぬるい存在じゃないからまあ良いだろうという独断と偏見の結果である。



「まず地球防衛軍というのは来る者拒まず去る者追わずっていう個人の意思を尊重する懐の広い組織なわけ。その実態は一般に余り公開されていないんだけど、たま〜に動画サイトとかで名前が上がる事があるかな。私はまだ会ったことはないけどでも色んなとこで「俺地球防衛軍に入るわww」「オレモwww」とかいうコメントを見るから結構人数は居るはずなんだよ!私も防衛軍に入る切っ掛けはプレデターっていう映画からだったんだけどさ〜あれ観てからもう地球を守ることしか考えてないんだわ。以来山奥でずっと修行を重ね続けて続けて続けてもう何年経ったか・・・漸くやってきた地球のピンチってことで喜んでアンタ達の事を迎撃出来ちゃったんだからね!キャハ☆」

「いやキャハじゃねえよソレどっからどう考えても人間の悪ふざけ発言じゃねえかオイ俺でも判るぞ!?冗談を真に受けて修行とか人生棒に振りすぎだろ!?」

「ふっ・・・バカだねアンタ・・・冗談っぽくぼやかさないと俄か隊員が増えすぎてしまって大変でしょう・・・?そんな生半可な覚悟で入隊するには厳しい部隊だって事!地球防衛は遊びじゃねえんだよ!」

「キリッとした顔してるけどな、お前言ってる事絶対おかしいからな。大体俺の他にもディセプティコンはまだいるんだぜ?こんな所で油売ってて良いのかよ地球防衛軍さまよぉ?」

「なんだってぇ!いや確かに一体だけじゃないだろうなーとは思っていたけども!捕虜から有力な情報を引き出すなんて私なんて優秀なの・・・?早速そいつらの基地に案内しなさい!ホラ早く!」

「首だけじゃ案内も何も出来ねーよ!それに交換条件といこうぜ・・・?俺様を身体と合体させて自由にさせてくれるってんなら、他のディセプティコン三体の情報をくれてやるぞ!どうだ人間このイケメンと取引できるだけでも有難い話だろう!?」

「三体の情報もほしいけどスタースクリームを自由にしてあげるつもりはないよ?何言ってんの?」

「いや何言ってるのは俺様の台詞だ!交換条件という言葉の意味を辞書引いて勉強し直せこのアホ女!!」

「えーだって私すっかりアンタの事気に入っちゃったんだもん〜。スタースクリームの事苛めてるとぉ・・・何だか心が浮き立つって言うかキュンキュンして止まんないの!これって恋?なんかもー恋だよね!という訳でこれからも可愛がってあげる積もりなんだからそっちこそ覚悟しようね?この自称イケメンの顎兄貴☆」

え"。・・・・・・・え?」




『そうさ君に逃げ場はない』



アンタが地球の何処にいたって探し出してみせるさ!だって私は地球防衛軍!





END


+++++++
スタスクは残念な生き物である前に可哀相な生き物だと・・・そう・・・思うのです。←
彼を見るたびに装甲引っぺがしてやりたくなります。(真顔)



 

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