メイン
□MILK
1ページ/1ページ
MILK
(どれにしよっかなー。)
実はちょっとこのコーナーが好き。
『入浴剤コーナー』
土曜に男ひとりで入浴剤を見てるのは少し痛いけど。
大丈夫!俺だけじゃない……はず。
そこに、初めて見る物があった。
(う、牛???)
ピンクと水色の牛が2匹並んでる。
バスロマン?どうやら入浴剤らしい。
(こんなん恥ずかしくって誰も買わないっつの)
と思いながら、他の入浴剤を眺める。
でも、なんだろう視線が突き刺さる。
ふと顔をあげるとさっきの牛がこっちを見ていた。(気がした。)
(だから買わないっつの!)
とひとりで牛に何度もつっこんでいた。……何度も。
-----30分後-----
(……買っちまった。)
半透明のビニール袋から少し透けてるピンクのそいつ(水色の方はさすがに諦めた)が山本みたいなムカつく笑顔で笑ってやがる。
風呂にこいつと一緒に入るのか………??
……なんか微妙な気分になってきた。
さっそくその日の風呂に牛を入れてみた。
濃いミルクの匂いが一瞬まとわりついたけどそこまで嫌じゃない。
しかたないからそいつはバスタブの角に置いといた。
風呂に入ってる俺とよく目が合う。改めて見ると、意外に可愛く思えたそいつに笑ってしまった。
-----日曜日-----
ピンポーン
ピンポンピンポーン
「うるっせーぞ山本。」
「おおっ!よくわかったなー!!」
「てめーくらいしかピンポン連打しねーんだっつの!」
「だって早く獄寺に会いたいじゃん」
「だまってろ馬鹿!!」
慣れた感じに俺の家に上がり込む。
そして、いつもの指定席に向か……わなかった。
「ちょっ、お前っ、どこ行くんだよ!」
「風呂場〜♪」
「は!?わけわかんねーよ!!」
「じゃじゃーん!!」
振り返った山本の手には水色の牛が……。
「こないだ買い物行ったら入浴剤の牛が2匹いてさー、片方だけ買うの可哀想だったからどっちも買っちゃったんだょな。だからおすそわけ♪」
(お前も買ったのかよ!)
ここで風呂に入らせたらピンク牛が見られちまう!!
それは恥ずかしい……!
「い、いらない!風呂に入んな!!」
「何焦ってんだ?」
「焦ってなんかねぇょ!」
「いぃじゃん!こいつが獄寺んちの風呂にいるとこが見たいのー!………強行突破!!」
「やめっ、馬鹿!!!」
ガラガラガラ
「あーーー!!」
「………。」
「獄寺も買ったの!?やっぱり気になるよなーこいつら。」
「………。」
恥ずかしい。恥ずかしすぎる…。ただの入浴剤なのになんでこんなに恥ずかしくなるんだよ…!あの牛が悪い!あんなつぶらな瞳を考えたやつは誰だ!!
「…獄寺顔赤いぞ?………あ!もしかして………俺だと思う????」
「………はぁ!?」
突拍子もない言葉に本気で驚いてしまう。でも、何言ってるんだこいつ…。
「いや、この牛がいたら俺が獄寺の入浴シーン見てる見たいかな、って。」
「アホか!!」
俺の反応でそうとる山本の脳を覗いてみたい。
「あ、それいぃかもな!」
そう言ってバタバタとマッキーを取ってきた。
そして水色牛を手に取り
『オレ』
とでっかく書き始めた。
そしてピンク牛には
『ごくでら』
と…………。
「お前、何やってんだよ!」
「これでいつも一緒に(怒られずに)風呂入ってられんじゃん。」
俺、今顔やばい。
ぜってー真っ赤になってる。
「入るか!!」
「で、こんなことも出来ちゃうわけです」
牛と牛の正面をつきあわせてぶつけた。
「ちゅー」
「死ね!今すぐ死ね!」
俺が死にたくなるくらい恥ずかしいことを、満面の笑みでしてしまう山本は本当に本当にアホだ。
でも、そんな笑顔の山本が心底好きな俺も同じアホなのかもしれない。