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□MILK
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MILK





(どれにしよっかなー。)

実はちょっとこのコーナーが好き。

『入浴剤コーナー』

土曜に男ひとりで入浴剤を見てるのは少し痛いけど。

大丈夫!俺だけじゃない……はず。

そこに、初めて見る物があった。

(う、牛???)

ピンクと水色の牛が2匹並んでる。

バスロマン?どうやら入浴剤らしい。

(こんなん恥ずかしくって誰も買わないっつの)

と思いながら、他の入浴剤を眺める。

でも、なんだろう視線が突き刺さる。

ふと顔をあげるとさっきの牛がこっちを見ていた。(気がした。)

(だから買わないっつの!)

とひとりで牛に何度もつっこんでいた。……何度も。




-----30分後-----





(……買っちまった。)

半透明のビニール袋から少し透けてるピンクのそいつ(水色の方はさすがに諦めた)が山本みたいなムカつく笑顔で笑ってやがる。

風呂にこいつと一緒に入るのか………??

……なんか微妙な気分になってきた。





さっそくその日の風呂に牛を入れてみた。

濃いミルクの匂いが一瞬まとわりついたけどそこまで嫌じゃない。

しかたないからそいつはバスタブの角に置いといた。

風呂に入ってる俺とよく目が合う。改めて見ると、意外に可愛く思えたそいつに笑ってしまった。





-----日曜日-----





ピンポーン



ピンポンピンポーン



「うるっせーぞ山本。」

「おおっ!よくわかったなー!!」

「てめーくらいしかピンポン連打しねーんだっつの!」

「だって早く獄寺に会いたいじゃん」

「だまってろ馬鹿!!」

慣れた感じに俺の家に上がり込む。
そして、いつもの指定席に向か……わなかった。

「ちょっ、お前っ、どこ行くんだよ!」

「風呂場〜♪」

「は!?わけわかんねーよ!!」

「じゃじゃーん!!」

振り返った山本の手には水色の牛が……。

「こないだ買い物行ったら入浴剤の牛が2匹いてさー、片方だけ買うの可哀想だったからどっちも買っちゃったんだょな。だからおすそわけ♪」

(お前も買ったのかよ!)

ここで風呂に入らせたらピンク牛が見られちまう!!
それは恥ずかしい……!

「い、いらない!風呂に入んな!!」

「何焦ってんだ?」

「焦ってなんかねぇょ!」

「いぃじゃん!こいつが獄寺んちの風呂にいるとこが見たいのー!………強行突破!!」

「やめっ、馬鹿!!!」



ガラガラガラ



「あーーー!!」

「………。」

「獄寺も買ったの!?やっぱり気になるよなーこいつら。」

「………。」

恥ずかしい。恥ずかしすぎる…。ただの入浴剤なのになんでこんなに恥ずかしくなるんだよ…!あの牛が悪い!あんなつぶらな瞳を考えたやつは誰だ!!

「…獄寺顔赤いぞ?………あ!もしかして………俺だと思う????」

「………はぁ!?」

突拍子もない言葉に本気で驚いてしまう。でも、何言ってるんだこいつ…。

「いや、この牛がいたら俺が獄寺の入浴シーン見てる見たいかな、って。」

「アホか!!」

俺の反応でそうとる山本の脳を覗いてみたい。

「あ、それいぃかもな!」

そう言ってバタバタとマッキーを取ってきた。
そして水色牛を手に取り
『オレ』
とでっかく書き始めた。
そしてピンク牛には
『ごくでら』
と…………。

「お前、何やってんだよ!」

「これでいつも一緒に(怒られずに)風呂入ってられんじゃん。」

俺、今顔やばい。
ぜってー真っ赤になってる。

「入るか!!」

「で、こんなことも出来ちゃうわけです」

牛と牛の正面をつきあわせてぶつけた。

「ちゅー」

「死ね!今すぐ死ね!」

俺が死にたくなるくらい恥ずかしいことを、満面の笑みでしてしまう山本は本当に本当にアホだ。





でも、そんな笑顔の山本が心底好きな俺も同じアホなのかもしれない。
 

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