●Novel・OTHERS●

□rain and the sun and the water
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rain and the sun and the water



尚和高校―

ホントは、関わりたくない場所のひとつだ。
なぜなら、オレが一番苦手な、いや、嫌いというべきか。
とにかく、そのとある人物に、関わりのある場所だからだ。

でも、ここに来てしまった。
なぜなら、悲しいかな、今一番お気に入りの彼女が、ここに在籍しているからだ。
じょしこーせーよ、じょしこーせー。
羨ましいデショ?
というのは冗談で。
実際のところ、オレは今、彼女といるときが、なぜか一番ラクに思えた。
無理しなくていいんだと思えた。

だから、暇つぶしに今日もまた、遊びにでも誘おうと思って、校門で待っていたのが間違いだった。
そうだ、コイツも、ここに通ってたんだった―

式部吉乃、一生の不覚!

「…さん、…のさん?大丈夫ですか?」

はっ!

「え?あーあははは…何だった?」

「もぉ、急にボーっとするから、ビックりしましたよ?」
「ゴメンゴメン。まさかここで、天泣のお嬢ちゃんに会うとは思ってなかったからさ」
「あ。わたしのこと、覚えててくれたんですね!」

良かったー
と、心底嬉しそうにはしゃぐ。

そんな彼女を横目で見ながら、
能天気なヤツ。
と、心から思う。

どうして、生まれが違うってだけで、こうも明るくなれるんだ?
どうして、こんなヤツが存在するんだ?
後から九艘になったって聞いたが…

何の疑問も持たないのか?

「…さん、吉乃さん!」

「え?な、何だい??」
「吉乃さんって、水琴おばあちゃんの後継なんですね〜すごいですね!」
「あ?あ〜あはは、そうかな?」

何がすごいもんか。
本気で思ってるのか?
やっぱり、バカじゃないのか?

「わたし、おばあちゃんとは、実は6歳の頃から会ってて、それで、久しぶりに2年前に再会して、とても嬉しかったんです。」

「なのに、なのに…あのとき…」

ぐすっ…ひっく…

オイオイオイオイオイ
何でここで泣き出しちゃうワケ?
っていうか、アンタ、自分が泣いたらどうなるか、知らないワケじゃないよねぇ?
ちょっとぉぉぉ!!?

「お、お嬢ちゃん…?」

ゴロゴロ…
ホラ来た
曇ってきましたよー
やっぱり本当に、天泣の、八百比丘尼の力を…

「陽菜!!」

うわ!
この声は…

恐る恐る振り返ると、
いた。
一番会いたくないヤツが。

ていうか、この状況、マズいんじゃないのー?

「た、くや、先輩…ぐすっ…」
「陽菜、どうしたんだ!」
血相を変えて駆け寄るあの男。
声、掛けないとマズいよねぇ〜これは。

「や、やぁ〜拓哉さん」

「!吉乃さん!?」

はぁ…。
どうも、ツイてないねぇ〜今日は。

「ご、ごめんなさい…拓哉先輩。水琴おばあちゃんのこと、想い出して、私が…」
「!あ、ああ、そうか…急に天気が崩れたからもしやと思ったんだがな」
「でも、もう大丈夫。拓哉先輩が来てくれましたから」
「…バカ…」

えーちょっとちょっとー
どうなってるのこれー
あのー…

むしろ一生放っといて欲しいんだけど、でも、その場にいないことにされるのも腹が立つよね。
一応、アピールしてみる。

オレって健気〜

「!あ、吉乃さん。すみませんでした。陽菜が余計なことを…」
「いやいやーオレのこと見て、ばぁちゃん想い出すなんて、ねぇ…天泣のお嬢ちゃんとは、ここで偶然会っただけなんですけどねぇ…」

暗に迷惑って言いたいんだけどね、オレ。

「すみません。陽菜はもう大丈夫なんで。ありがとうございました。」

って、頭下げられてもねぇ〜
やっぱり、苦労知らずの坊ちゃんは、どこまでもお人好しだね〜

「ホラ、行くぞ、陽菜。もう泣き止んだか」
「うん。ごめんなさい、先輩」

何となく、目を合わせづらくて上を見た。

あ。

雲が無い。
高い、秋の空だ…

へぇ…
天泣の力、ねぇ。

じゃあ、と言って、2人仲良く去っていった。
バイバーイと、一応、2人を笑顔で見送る。
オレとしては厄介払いができてちょうど良かったけど、しかしあの2人、噂は本当だったんだねぇ。

ふぅ。
一時はどうなることかと思ったよ〜

世間知らずの、単純な、若い九艘の2人、か…

未来があって結構なことで。
それに引き換え、オレは…

「あれ、吉乃さん?」

あーらら。
やっと来たよ。
オレの待ち人が。

不思議そうな顔で覗き込まれる。
でも、不思議と先刻みたいに嫌な感じはしない。

何でかねー?

さーてと。

「お嬢ちゃん、今日はどこ行こっかー?」


天高く、爽やかな秋の空。
こんな水浸しのオレの心を癒してくれるのは、間違いなく、雨じゃなくて、この太陽…なんだろうね。

さて、オレの未来はどうなるか。
さすがに、巫女のオレでも、見えないもんだね。

ばぁちゃん、アンタは、見えていたんだろ?
だから、オレの腕に呪いをかけた。

チリッ…

左腕に、何か走った気がした。

オレは、いつまでもこの呪いと共に生きていくよ。
でも、願わくば、この太陽と一緒に、少しでも永らえたいもんだけどね。




Fin.


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