●Novel・SRW●

□アイノエゴ
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「オレ、行かねぇよ」

ぽつりと漏らされた言葉に、リューネは耳を疑った。


「え?今、何て…」
驚いて振り返る。
てっきり、一緒に格納庫へ向かうと思っていた。
予想外の答えだった。

「出撃は、しねぇ」
マサキは自室のベッドに腰掛けたまま、顔を上げずにしかしはっきりと、答えた。
「テューディを殺すってことは…」
その後は、言葉にならなかった。
膝の上できつく拳を握り締める。

「マサキ…」
かける言葉が見つからず、リューネは躊躇いがちに目を逸らした。

リューネだって、口にしたくは無かった。
しかし、これでは埒があかない。
意を決して、半歩進み出た。


「…ウェンディさんを殺すってこと?」
はっきりと告げられた言葉に、マサキは僅かに肩をぴくりとさせた。

そして、何か言いたげに一瞬だけ顔を上げかけたが、
「…そうだ。そんなこと、できるわけねぇよ」
諦めたように呟いて、また目線を床に戻す。

リューネは表情を変えず、マサキを見据えた。
「じゃ、やめればいいよ」
「…?」
少しだけ、驚きの表情が浮かんだ。
「やめれば、いい。」
リューネはもう一度、先刻よりも語気を強めて言った。

「魔装機神操者がそう決めたんなら何も言わない。でも、あたしは行くよ」

「……」

一瞬の沈黙。


さらにリューネは繰り返した。
念を押すように。
なだめるわけでもなく、諭すわけでもなく―
「もう一度言うよ。できないって思うぐらいなら、やめたほうがいい」

淡々と紡がれる言葉を、マサキはただ聞いていた。
まるで、その言葉に意味など無いように、
その言葉に、意味を見つけたくないかのように…
「……」

それを見て、リューネは少しだけ哀しそうな瞳を見せた。
そしてドアの開閉ボタンに手をかけると、
「じゃあね。生きて会えるといいね。」
無理に笑顔を作って微笑んだ。


「リューネ、待…」
マサキが立ち上がろうとしたその刹那、

シュッ

無機質な音を立てて、マサキの自室のドアが閉じられた。

「……」

「くそっ…!!」

ダンッ!!


やり場の無くなった怒りを、マサキは壁にぶつけた。
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