●Novel・OTHERS●

□A lovely autumnal day
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「お前…太っただろ」

いつもの昼休み―
いつものように、屋上でみんなと美鶴ちゃんお手製のお弁当をほおばる私。
それが、私に発せられた言葉だと気付くのに、数秒かかった。

「…は?」

私はビックリして、から揚げをのどに詰まらせそうになり、慌てて口にお茶を注ぎ込んだ。

みんなの視線が私に集まる―

え?

太った?

誰が?

「聞こえなかったのかよ、珠紀、お前のことだよ」

―聞こえなかったわけじゃない。
なのに、もう一度、その言葉は私に届いた。

「太っただろ、珠紀」

呆然とする私。
お弁当を食べるのを忘れていた。

「…プッ」
口火を切ったのは、拓磨だった。
「あははは!真弘先輩、コイツ、開いた口がそのままっスよ!」

お腹を抱えて笑い出した。
ちょっと、それは無いんじゃないの―
と言おうと思った瞬間、

「えっ…急にどうしたんですか、珠紀先輩がびっくりしてますよ」

慎司くん…
やっぱりアナタだけは私の味方なのね…

そう思ったのに。

「そ、そんな、ホントのことを言ったら…あの、その、一応先輩も女の子なんですから…」

え?

ちょっと、慎司くん?

驚いたのも束の間―

祐一先輩が、
「そうだぞ、真弘。そんなこと、珠紀本人が一番分かってるだろう?」

また、私に視線が集まった。

「へぇ…そうなのか、珠紀。てっきり、オレ様はお前が気付いてないと思ってたんだぜ?」

なによ!親切心で言ってやった、とでも言うの!?
今は、この目の前でニヤニヤしてる小さい人が、とっても憎らしく思える。

でも…

私は、この村に来てからのことを走馬灯のように思い出した。

美鶴ちゃんのお料理は美味しい。
朝ご飯も豪華だし、そういえば、天ぷらが出てきた日もあったわよね。
お弁当は、毎日私の大好物のから揚げ…
お夕飯はみんなとお鍋…

確かに、食生活は以前と比べるとすっごく裕福だ。

お昼に、たい焼きを食べたこともあった。
焼きそばパンだって…



焼きそばパン?

私は、ニヤニヤと、勝ち誇ったように私を見下ろしている(実際の目線は同じだけど)真弘先輩に向かって言った。

「真弘先輩が、私に焼きそばパンを食べさせるからですよ!!」

真弘先輩が目を丸くする。

「何ィー!じゃあ、お前が太ったのはオレ様のせいだとでも言うのかお前は!!」
「…ッ、だって、あんなの、おかしいですよ!麺とパンが一緒になってるなんて、炭水化物×2+油だなんて、おかしいじゃないですか!!」
「言わせておけば…珠紀、表出ろォォ!!」
「ここは既に外です!」
「てんめぇ〜イィ度胸じゃねぇか!」

真弘先輩は、カッとなり、私に掴みかかろうとした。
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