●Novel・ネオロマ●

□過去の拍手お礼文
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拍手お礼文・1



「うー寒いっ」
学校の帰り道、火原は無造作に巻いたマフラーに顔をうずめた。

「すごく、寒くなってきましたね」
隣を歩いていた香穂子も、ポケットのカイロを握り締めた。

夕暮れ時、といっても、この時期、陽が落ちるのはとても早かった。

「あーでも、こうして香穂ちゃんと一緒にいると、ほわぁってする!」
少し前を歩いていた火原は、寒くても上機嫌、という風に振り返った。

「そ…!」
そう言われても、何て返したらいいのやら…香穂子は返答に困った。

が、返答を待たずに、火原は一転、思い出したように、わずかに顔を歪める。
「でもね、きみが加地くんといるのを見ると、すごくもやもやするんだよ」
香穂子は面食らった。
「な、なんでそこで加地くんが?」

そんな様子にお構い無しとばかりに、火原は頬をぷぅっと膨らませる。
「だって、ずるいじゃない。ずっと一緒なんてさっ」

…と言われても、同じクラスなのだから仕方が無い。


ましてや、先輩とは学年だって違うんだから―


なんとかなだめようと思い立ち、香穂子は火原に近寄ると、少し悪戯っぽく告げた。
「私はこうして火原先輩と帰れる方が、嬉しいですよ?」
ね?と、にっこり微笑む。
香穂子の笑顔には敵わない。

「えっ!ほんと!?」
さっきまでの不機嫌はどこへやら。
いつの間にかすっかり立ち直っていた。
「そっかぁぁ〜えへへ」


「香穂ちゃん、だいすき!」


夕暮れ時の帰り道。
繋いだ手の温もりを感じながら、冬の風はうっすらと2人の頬を染めていくのだった。








(2008年、1〜2月までサイトTOPで使用)

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