「ニオウくん、なんですかこれは」
「ん、AV」
飲み物を持って部屋に戻ると、DVDが机に重ねられていた。
特別隠していたわけでもないが、見える所に置いていた訳でもないから柳生が部屋を捜しでもしたのだろう。
「……こういうの見たりするんですか」
呆れるというよりは落胆の声音。
潔癖な柳生のことだからこういうものを見るなんて信じられないのだろう。
「キョーミあるん?」
「そういう訳では……」
とか澄まして言っているその顔がほんのり赤い。
一般の男子らしく興味がない訳ではないらしい。
「気になるなら一緒に見るか?」
「は?」
こういうものに柳生がどう反応するか無性に見たくなって、
嫌がっている柳生を無視してDVDをデッキに突っ込んだ。
■
「あの……ニオウくっん…」
「クスクス…やぎゅうはテレビ見ときんしゃい」
つつと人さし指で下から上へと下腹部をなぞると体が跳ねて艶やかな吐息が漏れる。
初めて見るAVは刺激が強いらしく、一般的思春期男子と同じ反応にちょっと安堵。
そしてそれ以上に湧くイタズラ心。
中味のない単なる猥褻なDVDよりも、ウブな柳生の方が見ていてよっぽど面白い。
「やぎゅ、DVDの内容どうじゃ?コーフンする?」
後ろから抱き締めて耳朶をはむ。
「なにいって…」
ベルトを外し、窮屈そうにしている中身を取り出し直接いじる。
「体は正直やぞ」
扱くと手の中で硬度を増し、先端から嬉し涙を零すそれがオレを興奮させる。
「ダメです…もっ…」
「えぇよ、このままイきんさい」
擦るスピードを上げて開放してやろうとすると、その手が封じられ気付けば床に転がされていた。
「どうせイくなら、貴方の中がいいです」
荒々しい呼吸。
興奮した肉体。
断る理由はどこにもないので、返事の代わりに足を広げた。
DVDの女の嬌声は芝居くさかったけど、それすら興奮の材料にとって変わった。
■
「ニオウくん…ひとつ思ったんですが…」
「んーどした」
「…あぁいうことって皆さん本当にしておられるんでしょうか」
ああいうこととはAVの内容らしい。
痴漢に異物挿入にSMもの等々初めて見る柳生には刺激が強すぎる内容だった。
因みにオレの趣味ではない。
「少なくともオレはやったことないのう。まあヤる奴もおるんじゃなか」
「そうですか……」
「ナニ?お前もしかしてオレにああいうことしたいとか思ったんかぁ」
柳生との行為はノーマル一辺倒。故に最近はマンネリ気味でこういうものにも多
少興味があった。
とはいえ、相手は真面目な柳生。どうしたらいいものかと思っていたが……
「たまにはああいうのもえぇかもしれんのう」
心の内を知られないようにできるだけ素っ気なく言う。
「っニオウくん…」
こうして新たな扉を開けるのにまんまと成功した。