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□甘くてニガイ
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寒さがほんのり和らいできた2月。
世間に甘い匂いが漂う季節。
当日が近付くに連れ増えていったチョコレートの小山がリビングの一角を占領している。
甘いものは嫌いではないし、疲れた時には食べる。けれども。
けれども、多すぎても困る。正直言って困る。
それでも捨てることなど到底できるわけもなく、母と姉に恵んでいるが、それを差し引いても自分と柳生の分とが合わさればそれなりの数にのぼる。
その小山を見て、あぁしまったなぁと今さらながら思う…
「やぎゅう、どれが欲しい?」
わざと分かりきったことを聞けば、ぺちっと軽く頭をはたかれる。
「ワタシへのバレンタインに他人からの流用とはあんまりです」
それはわかってる。流石にそこまで意地は悪くない、と思うし。
なんで毎年お前にチョコやらんなあかんねん。と突っ込むこともこの際置いとくし。
しかし、困った。
はたかれた頭をさすりつつ内心本気で困惑。
「やけど買い忘れてもたし」
ポロッと本音を告げれば、はぁとやぎゅうが仰々しくため息をつく。
そう、今年は仕事やなんやで忙しくチョコを用意し忘れたのだった……毎年の習慣だっただけになんとなくバツが悪い。
どうしたもんかのぅ
と目の前のチョコの山を見つめていると、
「あ」
イイコトを閃いた。